-お互いの演技についてはどう思いましたか。
平井 さっきも言ったように、雷麟くんは実際の年齢よりも落ち着いた芝居をする人だと思いました。森田さんは、現場入りをする前からすごく準備をして、自分の中でたくさんシミュレーションをして現場に向かう方なんだと思いました。
森田 3人一緒のシーンがなかったので、お二人のシーンの雰囲気に完成作を見て初めて触れることができました。演じるに当たっては、美琴という役は結構想像している時間が長いイメージだったので、本読みの時に、演技のトーンみたいなものを決めました。読み合わせの時に、「この時は声はそんなに張らない方がいい」とか話し合うことができたので、現場に入ってからはお二人や監督ともすごくいいやり取りができたと思います。
-完成作を見た印象は?
杉田 僕が台本を読んだ時に感じた気色悪さは、ちゃんと見る人にも伝わるんじゃないかなと思いました。脅かしたり、大きな音を立てれば分かりやすいと思いますが、監督も「実際に幽霊が見えたとしても、音を出しながら出てくるのはあり得ない」と言っていました。だからこの映画は、何か妙にリアルだし、いい意味で嫌なものを残していく。そういう映画だと思います。それと、森田さん演じる記者側のストーリーは、自分が全く関わってない部分なので、完成作を見るのが楽しみでした。どういう経緯で僕たちと一緒に“見つからない廃墟”を探すことになったのか、お客さんとして見ていて、とても面白かったです。
平井 この映画は分かりやすいです。それに血みどろの幽霊も出てこないから、すごく品のあるホラー映画だと感じました。
森田 ジャパニーズホラーが好きな方にめちゃくちゃ刺さるホラーが戻ってきたと思いました。ビデオテープの描写は怖かったので視界に入れられませんでした。藤井隆さんがいるシーンが息抜きになるぐらい、すごく怖い完成度で驚きました。
-ホラー映画自体は好きですか。
杉田 好きじゃないです。そもそもバーンって出てくるのは好きじゃないし見ないです。1人暮らしですし、見てしまったら怖くて風呂にも入りたくなくなるので。
森田 私も怖いのは全然好きじゃないです。
平井 黒木瞳さんの『仄暗い水の底から』(02)が大好きです。この映画もそうなんですけど、ただホラー映画というだけじゃなくて、心理サスペンスみたいなところがあって、構成もすごく巧みだし、クレバーさみたいなものが感じられてすごく好きです。
-最後に、読者と観客に向けて一言お願いします。
杉田 僕が脚本を読んで感じた気色悪さや不思議な感じや後味の悪さが、映像になったことでよりイメージが明確になったと思います。せりふの中でも、聞いていると鳥肌が立つようなことを言っていたりもします。だからジャパニーズホラーが大好きな方にはめちゃくちゃ楽しめる作品だと思います。あとは、僕のような脅かし系が苦手な人でもしっかり楽しめると思うので、ぜひ映画館で見ていただけたらと思います。
平井 すごく落ち着いたホラー映画だと思うので、ご鑑賞の際は飲み物ぐらいな感じで、忍びの心で見てください(笑)。
森田 この映画は、静けさというか、派手な音がしないことが逆にじわじわと効いてくるようになっています。それは映画館の密閉された空間の方が感じやすいと思うので、ぜひ映画館で見ていただきたいと思います。ホラーとしての要素がいろいろと入っているので、それを楽しみにしていただけたらと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)