
-泥酔してルカにくだを巻く入巣がユーモラスでした。
久保 気が付いたらものすごく楽しくて、ハイになっていました。ろれつが回っていないのに、言葉もスルスル出てきて。本読みのとき、監督から「酔うシーンをきちんとやりたい」と言われ、心配していたんですけど(笑)。
平 本当にお酒を飲んでいるのかと錯覚するほどで、「しーちゃん、すごく酔ってるな」と思っていた(笑)。
久保 完成した映画を見たとき、自分でも「こんなに酔っていたんだ!?」と驚いたくらい(笑)。
平 ほっぺも赤くなって、すごくかわいかった。本当に入巣が酔ったら、こんな感じなんだろうなとリアルに感じられて。
久保 でも、現場では監督が一番楽しそうなんですよね。「カット!」の声が笑っていて、それを聞くたびに「監督のいいゾーンにはまったな」と思えて。おかげで私も楽しかったですし、自由度がすごく高かったので、「どれだけ監督を楽しませることができるか?」という気持ちで撮影期間を過ごしていました。
-平さんは、ライブシーンのご苦労もあったのではありませんか。
平 ギターや歌など、初挑戦が多く、その期間ががむしゃらすぎて、撮影の記憶がなくなるほどでした。だから、完成した映画を見たとき、他人事のように思えて。ルカとして生きた期間は、それくらい必死だったんだなと。おかげで自分のお芝居の引き出しもたくさん増えましたし、すごくいい経験になりました。
久保 現場で「この後、歌の練習がある」と言っているたいちゃんの姿が、そのまま音楽の夢に向かっていく先輩に重なり、すごく魅力的でした。ライブシーンもかっこよくて。おかげで、撮影が終わって1年くらい経つ今も、毎日(平が劇中で歌った)「ネムルバカ」を聴いているんです。曲もすてきですし、たいちゃんの声が大好きで。
平 うれしい…。ありがとう。
久保 あのライブシーンは、ぜひ劇場で味わってほしいです。
-さまざまなチャレンジを経て、俳優業に対する新たな意欲が生まれてきた部分はありますか。
久保 ありました。新しいことを始めるたいちゃんを間近で見ているのが、入巣の先輩に対する感覚にすごく近かったんです。撮影が終わった今もその気持ちが残っていて、自分ももっとチャレンジしなくちゃ、と。
平 阪元ワールドに見事にハマっているしーちゃんを見た時、ものすごく衝撃を受け、しーちゃんの役との向き合い方をリスペクトするようになりました。そういう意味では、阪元監督やしーちゃんとの出会いは、すごくいい刺激になりました。
-それでは最後に、お2人が感じた『ネムルバカ』という作品の魅力を教えてください。
平 何げない日常を描きながらも、すべての登場人物が、日々を過ごす中でとても大事なことを言っているんですよね。だから、胸に響く言葉がたくさんあって。私たちは「何かしなきゃ」、「好きなことをやらなきゃ」と思いがちだけど、「毎日生きているだけで偉いんだよ」とただ生きていることを肯定してくれるメッセージも込められている。そこがすごく魅力的な作品です。
久保 本当にその通り。音楽という夢を持つ先輩と違って、「自分は何がしたいんだろう?」と考えながら日々を過ごしているのが入巣です。そんな入巣は、先輩にとって本当に必要な存在なのか、すごく考えました。でも、先輩は「私はお前が大事だよ」と言ってくれる。その言葉に、入巣を演じた自分まで生きていることを肯定してもらえた気がしました。この映画をご覧になった皆さんにも、そういうメッセージが伝わったらうれしいです。
(取材・文・写真/井上健一)

映画『ネムルバカ』3月20日(木・祝)全国公開