-文子が生涯学習の講座に行きますが、生涯学習についてはどう思いますか。
実は、以前、静岡県の生涯学習の委員をやっていました。それから最初に出した『山なんて嫌いだった』という本の後書きに「いつか少し時間ができたら大学に行って勉強してみたい」と書いているんです。実現できていませんが。だからそういう思考の人間ではあるんです。ところが、仕事をやりながら、山に行ったり、親の介護をしたりしていたら、なかなか難しくて。1度、大学の通信教育を受けましたが続きませんでした。勉強するのって、勉強すること自体に魅力もあるけど、1人ではなかなか難しい。どこかに行って人と一緒にやることや、そこで友達ができるのも大きな意味がありますよね。だからスクーリング程度にしろ、通学してやることがいいと思います。いつかできたらいいですね。でも、できないうちに終わるのかな。
-市毛さんといえば登山ですが、登山は勉強とは少し違いますからね。
ある意味では山も勉強なんですよ。いろんな自然科学とか地学とか。文化人類学的な勉強でもあるし、民族学でもあるし。今井通子さんという登山家が「山は五感を駆使した学問である」とおっしゃったんです。全くその通りだと思います。学生の時の勉強は、成績を出すとかやらなければいけないから、楽しくないんじゃないですか。でも、自由にやる勉強は本当に楽しいと思います。だから山は一生できる最高のホビーだと思っています。
-今回は富士山が重要な舞台なのに登山をしない役でしたね。
そうなんです。最初は富士山に登るから私に声をかけてくださったのかと思ったら、登る人ではなかったんです。逆に長塚さんが登る人でした。実は映画『岳』の時も私は山に行けていないので、「私を山に連れて行かなくてどうするのよ」と言っていたんですけど(笑)。
-完成作をご覧になって、どんな印象を持ちましたか。
自分の駄目なところや嫌なところばかり気になりました。でも、試写を見た方が、すごく深く見てくださって、いろいろなことを言ってくださったり、泣いてくださる方もいて、「ちゃんとできているのかな、大丈夫なのね。よかった」と思いました。これで試写や公開の時にも、ちょっと自信を持って皆さんの前に出てもいいのかなみたいな気持ちでした。
-市毛さんに届いた感想の中ですてきだなと思ったものは。
孫との触れ合いもいいし、大学で学びを見つけた姿もいいし、夫婦愛や母娘の確執もいい、みたいな感じでした。それをちゃんと言葉として伝えてくださるので、ありがとうございますと思いました。
-映画の見どころも含めて、これから見る観客や読者の方に向けて一言お願いします。
ホッとしていただけるといいかなと思います。ちょっとふわっとしている映画ですけど、現代の家族のいろんな姿を見ていただけると思うし、その中で少しでもホッとしていただけたらと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)










