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【海南自由貿易港政策】リゾート島から国際貿易拠点へ 中国海南省の訪日団が日本企業に進出アピール

リゾート島として人気が高い海南島
リゾート島として人気が高い海南島

 世界第2位の経済大国・中国。新型コロナウイルスの影響もあり、成長が鈍化していると言われるが、人口約14億人は巨大なマーケットであることに変わりはない。多くの日本企業がビジネスチャンスを求め中国各地に進出している中、近年注目されているのは最南端にある「海南省」だ。
 海南省は、リゾート島で知られる海南島と周辺諸島で構成し、面積は日本の四国の約2倍。東南アジアに近く、熱帯気候から「アジアのハワイ」として中国や海外からの人気が高く、コロナ禍の2021年でも年間約8000万人の観光客が訪れたという。

▽習近平氏の国家戦略

 観光が主要産業だった海南省が、貿易で脚光を浴びることになったのは「海南自由貿易港政策」が発表されてからだ。2018年4月、習近平国家主席が、改革開放の重要な国家戦略として海南島全域で自由貿易政策を進めることを打ち出し、計画がスタート。翌年、海外企業などからの海南島進出をサポートする政府機関「海南国際経済発展局」を設立した。
 同発展局と関係機関の7人で構成する訪日団が、海南自由貿易港政策について説明するため、このほど来日。東京、大阪、福岡で日本企業向けに説明会を実施した。12月6日に東京で開催した説明会を前に、訪日団長の宮起君(ゴン・チージュン)海南国際経済発展局副局長から話を聞いた。

宮起君 海南国際経済発展局副局長
宮起君 海南国際経済発展局副局長

▽中国改革開放のモデルに

 宮氏は今回の来日の目的について「コロナ禍となって初めて海南省から国を出て投資誘致活動を行うプロジェクトだ」と強調。「海南自由貿易港政策が日本企業にとってどんなビジネスチャンスがあるか知ってもらいたい。また、(2021年から始まった巨大イベント)『中国国際消費財(消費品)博覧会』の情報も伝えたい」と話した。
 宮氏ら訪日団によると、自由貿易港政策の全体案が2020年6月に発表され、習近平国家主席が「海南省を中国改革開放のモデルにする」と宣言。計画目標は3段階で、2025年、2035年、2050年まで段階的に貿易、投資、人の出入り、貨物輸送などの利便性を高め「香港やシンガポールのような自由貿易港にする」としている。

海南自由貿易港政策について説明する海南国際経済発展局の担当者
海南自由貿易港政策について説明する海南国際経済発展局の担当者

 政策の柱は、「ゼロ関税」「低税率」「税制簡素化」だ。現在、輸入設備、ヨット、消費財などが免税になっており、2025年以降は関税商品リストに入っていない限り、ほぼすべての貨物が関税フリーで海南省に入ることができる。低税率については、法人税、個人所得税の税率が15%で、香港、シンガポールよりも低いという。税制簡素化は、2025年以降は現行の18税種を7税種程度に簡略化するとしている。

州都・海口市中心部に建つ日本企業ビル(左側のビル、海南国際経済発展局提供)
州都・海口市中心部に建つ日本企業ビル(左側のビル、海南国際経済発展局提供)

日本企業ビルも建設

 こうした政策の裏付けとして、宮氏は2021年6月に発効した「海南自由貿易港法」で「法律により、長期的、安定的にメリットが保障される」と説明した。海南省では日本企業誘致のため、2022年7月に現地法人設立などにワンストップで相談を受け付ける「日本企業サービスセンター」を州都・海口市に設立したほか、日本企業が入居する「日本企業ビル」も建設するなど日本向けに優遇策を充実させている。

 これまでに海南省にはトヨタ自動車、三菱商事、ヤクルト本社など100社を超える日本企業が進出。NIPPON EXPRESSホールディングズ(日本通運)グループのNX国際物流(中国)が2022年7月に事務所を設立したほか、ローソンは海南島内に120店舗を展開している。

 宮氏は日本企業への期待について、海南省は産業観光業、現代サービス業、ハイテク産業、熱帯農業という四つの主要産業があることを示した上で「日本企業が得意とする省エネ・環境保護、医療、製造業などの分野は海南省が必要としている。自由貿易や博覧会を利用して日本の商品を海南省経由で中国市場に導入してもらいたい」と強調。「今後、日本商品を専門に扱う百貨店も計画している」と“熱烈歓迎”をアピールした。