「RTD」―。一般にはあまり聞かれない言葉だが、スーパーやコンビニの飲料コーナーには数え切れないほど多くのRTDが置かれている。「Ready to Drink」の略語で、そのまますぐ飲める缶チューハイや缶カクテル、ハイボール缶などのアルコール飲料のことだ。
サントリー(東京)は2月28日、東京都内で「2023年RTD・リキュールスピリッツ事業戦略説明会」を開催。取締役常務執行役員の森本昌紀スピリッツカンパニー社長は「RTDはウイスキーと同じくらい長い歴史とビジネスサイズがある」と話し、ウイスキーと共に「スピリッツ事業」の二枚看板であるとの認識を示した。
▽20代はビールよりRTD
RTDの魅力は商品の多彩さだ。サントリーのRTDラインアップには、出荷数順に缶チューハイ「-196℃」、レモンサワーの「こだわり酒場」、低アルコールのチューハイ「ほろよい」、「角ハイボール」などがある。このほか新ブランドとして2022年2月に発売した缶入りジンソーダ「翠(SUI)」は、それまでなじみがなかったジンをベースに食中酒としてヒット。計画比158%と好調だったという。
サントリーによると、RTD市場(業界全体)は10年間で2倍以上になったという。特に若年層に人気があり、20代から70代まで「お酒を飲み始めた時、どのカテゴリーから入ったか」を聞いたところ、30代から70代まですべての年代でビールが最も多かったが、20代はRTD(52.5%)がビール(29.5%)を大きく上回った。
▽「若者の飲用機会を増やす」
若者の嗜好(しこう)について、鈴木あき子RTD・LS事業部長は「RTDは手軽さと豊富なバリエーションがある。最初に触れるアルコールに適しているのだと思う」と分析する。こうしたことを背景に、サントリーは2023年のRTD事業を「若年層」「食中酒」「ノンアルコール」を3本柱に据えた。
特に「若年層」は、サントリーの年代別顧客数に関する調査で20~29歳が前年比95%と減少傾向が見られたことから「若年層の飲用機会を増やす」戦略を立てた。若者世代をターゲットに昨年10月に発売したカクテル風チューハイ「BAR Pomum(バー・ポームム)」が3カ月で計画比175%と好調だったことから、新たに「BAR Pomum〈林檎(りんご)とジンジャー〉」を発売する。
▽食事中に飲む商品を新開発
また、RTDは食事前や風呂上がり、寝る前などと比べ「食事中に飲む」という声が最も多いという調査を受け「食中酒として価値強化する」方針。食中酒として人気がある「翠(SUI)」に加え、居酒屋でプレーンサワーとして飲まれている「タコハイ」に着目し「こだわり酒場のタコハイ」を新投入。「-196℃」の新商品として「-196℃瞬間凍結〈無糖レモン〉」「同〈ウメ〉」を3月28日に発売する。
▽多彩な商品が望める
「ノンアルコール」についても、「以前の『飲まない日をつくる』という発想から、『お酒の気分を楽しむ』という意識に変わっている」(鈴木あき子RTD・LS事業部長)としており「食事中のノンアル」商品を拡充する。
森本スピリッツカンパニー社長は「RTDはウイスキー以上に商品開発の自由度がある」と強調した。これからも店頭で新しいRTD商品に出合う機会が増えそうだ。