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日本のスタートアップ進出に期待 ルクセンブルクの経済団体トップ

インタビューに応じたルクセンブルク商業会議所CEOのカルロ・テーレン氏(中央)=東京都港区のホテルオークラ、2024年6月13日

 来日中のルクセンブルク商業会議所トップ(CEO)、カルロ・テーレン氏(52)が6月13日、東京都内で取材に応じ、「わが国は欧州有数の金融センターであり国際ビジネスを展開する最適な環境にある。約80社の日本企業がルクセンブルクに現在進出しているが、まだまだ増やしたい。日本の投資を呼び込むプロモーションを強化していく」と述べ、日本からの積極的な企業進出、投資に期待した。

 テーレン氏は、ルクセンブルクの企業関係者約70人が参加する、同国のギヨーム皇太子率いる「経済ミッション」(経済使節団)の主要メンバーの1人として来日。6月10~13日、東京都内や茨城県つくば市を訪れ、量子コンピューター関連の研究開発施設などを見て回った。

 今回の経済ミッションの成果については「共通の価値観に立つルクセンブルク、日本両国の信頼関係をさらに強化することができた。特に両国共通の関心領域であり今後大きな発展が期待できる、宇宙産業や量子コンピューターの分野で協力関係を深めることができたのは大きな前進だ」と話した。

 意欲を示す日本企業の誘致に関しては「すでにルクセンブルクに進出している銀行・保険などの日本の金融機関6社が日本企業を誘致する“アンバサダー(大使)”の役割を果たしてくれるとうれしい」と述べ、欧州進出の拠点としてのルクセンブルクの優位性が、現地の日本金融機関を通じて日本に伝わることに期待を寄せた。

「経済ミッション」の成果を語るカルロ・テーレン氏

 また投資ファンドが欧州有数の規模を誇る“金融センター”であるルクセンブルクは、挑戦意欲のある企業の進出を歓迎するとして「大きな成長を目指す日本のスタートアップはルクセンブルクに注目して、進出を考えてほしい。すでに大きく成長したスタートアップが誕生している。特にフィンテックやブロックチェーン、データビジネス、ヘルステック、宇宙産業などの分野の進出に期待したい」と話した。

 さらに両国の経済を発展させていくには文化・観光なども含めた幅広い分野での交流が「とても重要」と指摘し、両国の空港を直接つなぐ旅客機の「直行便」開設や日本食の飲食店進出などを望んだ。

 名目GDP(国内総生産)がドル換算でドイツに抜かれて世界4位に転落した国際経済上の地位低下や人口減少など日本の課題については「日本がアジアの中で魅力的な市場であることは変わらない。日本企業は人工知能(AI)など新たなテクノロジーへの対応も早く、今後も発展の可能性を秘めている」と日本の国際経済上の存在感は不変とした。

 また「人口減少は日本だけの課題ではない。ドイツやルクセンブルクも人口減少の傾向にあり、移民の働きで人口減少を補っている面がある。日本は生産性向上で対応していると思う。どの国も人材を引き付ける魅力的な国になることが必要だ。ルクセンブルクも日本も同じ方向での対応を目指していくのではないか。その意味で両国は同じボートに乗っている、と言えるかもしれない」と述べた。