シーズン終盤の猛追撃を期し真夏の戦いを続けるプロ野球、横浜DeNAベイスターズが万全のサポート体制を整えた。本拠地、横浜スタジアム(愛称・ハマスタ)のランドリールームに従来のものと交換で最新式の大型洗濯機3台、選手ロッカールームなどに大型冷蔵庫を導入。チームを陰で支える“洗濯の小﨑さん”も「やっぱり期待は優勝よ」と話した。昨年からユニホームスポンサーを務め、製品を寄贈した総合家電メーカー、ハイセンスジャパンの家倉宏太郎マーケティング部長は「チームの勝利のためにわれわれに何ができるかを考えた」と話した。
▽母娘2代
「今シーズンは走塁用の手袋が汚れている選手が多い。チームとして『走塁の意識』を掲げているからね」。洗う立場からすると最も厄介な泥で汚れた手袋を持った小﨑さんの表情が緩んだ。きれいに洗い上がったものを身につけて練習に励んでほしい。汚れがひどい場合は洗濯機に入れる前にブラシで手洗いするという。
小﨑さんは2代目だ。母の稲葉記子さんは、ベイスターズの前身、大洋ホエールズの名選手だった松原誠さんの近所に住んでいた縁で、2022年まで44年間ランドリー担当を務めた。現役時代にお世話になったDeNAベイスターズ営業部の小山田保裕さんは「選手は球場に来たらまず稲葉さんにあいさつしていた」と振り返る。偉大な母が引退すると、最後の10年ほどは仕事を手伝っていた小﨑さんがバトンを受け継いだ。
洗い-乾燥-たたみ-ロッカーへの配達という1クールで4~5時間。ユニホームは「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA 青星寮」で洗濯をしており、ハマスタで洗うのは練習着、アンダーシャツ、靴下などだが、1回の練習が終わるとタオルだけで150枚ほど来るという。午前中から作業を開始し、昼前に一回り目が終了。次は選手たちの試合前練習が終わる午後3時ごろから。その回が終わるのはナイターの試合中。最後は試合終了後の洗濯物を集め、翌朝のセッティングをして帰宅する。「シーズンオフもあるし、チームが遠征で洗濯がない日もあるから」と笑い飛ばした。
▽プロの仕事
洗濯機は「HW-DG100XH」。それまで使っていたものと比べ1回で洗える量が8キロから10キロに増えた。導入に当たって、小﨑さんの要望を聞き、「横浜DeNAベイスターズ」モードを設定。寄贈から3週間が経過した8月上旬には、ハイセンスジャパンの今井俊次・開発担当(洗濯機)がアフターケアに訪れた。「前は洗濯物がつながって出ていたけど、これは、ほぐされて出てくる」と小﨑さん。緊張気味だった今井さんは「新しい機能です。便利さを感じてもらえて良かった」と笑顔になった。
さらに、洗剤の入れ方、汚れのひどさや泥か脂かといった種類による洗い方の違い、繊維が細かいものの扱いなどについて、小﨑さんが現場の立場から注文を出し、今井さんが最新の機能などについて説明した。次回までに新たに三つのモードを設定する約束をした今井さんは「昔と比べがんこ汚れが減っており、(業界全般的に)研究が遅れている。ハマスタでそこにチャレンジし、ビジネスのヒントを得たい」と話した。家電メーカーの開発担当もプロの仕事ぶりだ。
やりとりを聞いていた小山田さんは「汗っかきで現役時代はたくさん洗濯物を出しましたよ」と頭をかき「顔が見える関係でお世話になっているので、勝つことで感謝を伝えられればと思っていました」と当時を振り返った。
▽神聖空間
選手ロッカールームとチーム運営室に寄贈された大型冷蔵庫は容量360リットルの「HR-G3601W」。自動製氷システムがついており、ドアポケットには2リットルのペットボトルが楽々入るデザインだ。ロッカールームは選手、監督、コーチらしか出入りできない“神聖空間”。小山田さんによると、冷蔵庫には選手によって栄養管理用のサプリメントを保管したり、リラックス用にアイスクリームを入れたりと、「思い思いの使い方で共用している」という。家倉部長は「われわれも選手たちと共に戦っているという気持ち。チームとコミュニケーションをとりながら、きめ細かいサポートをしていきたい」と話した。