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DeNA伊藤選手が涙で支援誓う 難病の子ども、家族の姿に心打たれ

「せたがやハウス」の利用者と記念写真を撮影する横浜DeNAの伊藤光選手(後列中央)

 難病で入院・通院する子どもの家族が宿泊できる「ドナルド・マクドナルド・ハウス」への支援を続ける日本プロ野球選手会の活動の一環として、横浜DeNAの伊藤光選手(34)が1月26日、施設の一つ「せたがやハウス」(東京都世田谷区)を訪問した。利用者家族と交流した伊藤選手は「言葉にできないくらいの思いを感じた。これからも野球で成績を挙げ寄付することを続けていく」と話した。

 「けがをして良かったと思う」。プロ入り2年目に椎間板ヘルニアを患い手術を経験した伊藤選手が目頭を押さえながら話した。ドナルド・マクドナルド・ハウスは子どもを看病する家族が病院の近くで、1日1人1000円で宿泊できる施設。2023年10月現在で世界49カ国・地域に386カ所、日本には12カ所がある。01年に日本で最初にオープンしたせたがやハウスは、小児科専門の国立成育医療研究センターに隣接。23室は常に満室に近い状態だという。

「せたがやハウス」の大野一美ハウスマネジャーから施設の説明を受ける伊藤選手

 

 施設見学を終えた伊藤選手は、居合わせた数家族と向き合った。千葉県から来た大須賀康博さん(50)の13歳の長男は、プロを目指して野球に打ち込んでいた。しかし、昨年8月ごろから腰痛を訴え、10月に肝臓のがんが発覚、数日前に移植手術を終えたばかりだった。涙ながらに経緯を話す大須賀さんが「長男は左の投手。良くなったらキャッチボールを」と話すと、捕手の伊藤選手は「ぜひ、捕らせてもらいます」と応じた。

 ほかの家族も、子どものことを話すうちに涙ぐむ人がほとんど。そうした姿が伊藤選手の心を打った。プロ2年目のオリックス時代に椎間板ヘルニアで一時は歩行もできない状況に陥った過去を打ち明けた。「『こんなはずじゃない』というもどかしさ、現実から逃げられない悔しさ・・・。でも、その経験があるから、皆さまの思いを、今こうして感じることができる。けがをして良かったと、今、思う」。その場にいた人たちは伊藤選手の言葉に聞き入り、涙をこらえるように目をつむって天を仰ぐ人もいた。

一時退院で施設に来た子どもとキャッチボールをする伊藤選手

 

 〝HOME AWAY FROM HOME〟(わが家のようにくつろげる第二の家)をコンセプトとするドナルド・マクドナルド・ハウスは、寄付とボランティアで運営される。プロ野球選手会は、20年度から支援を開始。選手ごとに「1本塁打につき5万円」「1安打につき1万円」「1登板につき1万円」「1試合出場につき1万円」などと金額を設定し、選手会によると、23年シーズンは40選手で総額約1330万円を寄付した。伊藤選手は「施設に来て分かることもある。実際にハウスを訪れるよう、仲間の選手たちに伝えたい」と話した。