今度こそ食料自給率目標は達成するのか。農林水産省は、2025年4月11日に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」の中で、38%(23年度)の食料自給率を30年度までに45%に引き上げるという目標を掲げた。同省は00年以来、設定してきた目標を一度も達成していない。
目標を掲げる必要性について学生たちを対象にアンケートをとってみた。回答した82人の学生のうち、「今後も目標を設定すべき」と答えた学生が8割、「設定すべきでない」が2割だった。24年にも同じ調査をしたが、「目標を設定すべき」と「すべきでない」の回答がほぼ拮抗(きっこう)していた。昨年と比べ肯定派が増える結果となった。
肯定派の学生に、どうすれば目標を達成できるかについて、自由記述してもらった(複数回答可)。最も多い回答が「生産者への支援」(16人)で、その中身は「低い自給率の作物を作る生産者に助成金を出す」「耕作放棄地を再生し、生産振興を図る生産者を資金面で支援する」「就農して間もない若手農家への所得を支援する(営農意欲を高めてもらう)」などだった。ちなみに、昨年は「生産者への支援」は少数意見だった。昨年と今年で単純な比較は難しい。しかし、生産費の上昇や異常気象の影響などにより、生産者の所得が圧迫されているさなか、自給率向上に資する作物の増産を通じ、食料生産基盤を築くには、まず生産者の経営安定が優先されるべきだという考えが、学生の間で広まっていると考えられる。
続いて多かった回答には、「消費者に自給率関連の情報を発信すべき」(10人)、「実現可能な自給率目標の設定」(9人)、「生産の効率化(機械化、スマート技術などの活用)」(9人)が続いた。なお、昨年にはなかった回答として「国民の平均給与の引き上げ」(5人)が目を引いた。具体的には「安い給料では国産の食肉は買えない。自給率向上には、給与の引き上げか減税が必要」「国産食材に軽減税率を適用する」など。これらは物価高を反映したものと思われるが、自給率向上には、消費者の生活水準の向上が前提だという意見は納得がいく。
「目標設定すべきでない」と答えた学生も、自給率自体を否定しているわけではない。「目標設定に先だって優先することがある」という考えから、自給率向上のためのアイデアを披露している。たとえば「(消費者負担にならないよう)国産を重点的に扱う小売店に補助金を出す」「家庭菜園を国民的運動にし、家庭内自給率を高める」「自給率目標より、結果の検証こそ重要」など特徴ある意見が目立った。
目下、米価高騰や備蓄米流通問題に関心が集まり、基本計画の閣議決定はほとんど報道されなかった。真剣に食料自給率や日本の農業の行く末について考えている若者の思いを反映させた自給率政策が講じられることを願うばかりだ。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.19からの転載】