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観光業にこれから必要なスキルとは? ―WTTCレポートより 森下晶美 東洋大学国際観光学部教授  連載「よんななエコノミー」

 人手不足が加速している。観光業では人手不足とともに実はスキル不足が大きな課題となっており、インバウンドの客数は増えたものの収益性や運営など問題は山積している。

 2000年代以降、観光を取り巻く環境変化は他産業に類を見ないほど大きい。これまで旅行者といえば日本人の家族旅行、修学旅行、友人旅行が主流であったが、外国人やひとり旅が飛躍的に増え、バリアフリー整備により高齢者・障がい者らこれまでは旅行に出づらかった層にまで市場が広がった。

 加えてSNSなどを通じ個人が持つ情報量が大きく増加し、旅行目的も以前とは比べ物にならないほど多様化し、これにより観光ビジネスに携わるプレーヤーも他業種にまで及ぶようになった。

 マーケットとその志向が変わりプレーヤーが変われば、ビジネスそのものが変わったに等しい。スキル不足が生じるのも当然で、長年の観光業従事者でもこれまでのスキルだけでは変化に対応しきれていない。

 では、これからの観光業に必要なスキルとは何だろうか。世界の観光業の経営者で構成するWTTC(世界旅行ツーリズム協議会)が昨秋発行したレポート『The Future of Work in Travel & Tourism』では、観光業で今後重要となるスキルについてマネジメントと顧客対応の二つの職務レベルから次のように予測している。

 トップ5を挙げると、マネジメントでは「テクノロジー/デジタルスキル」「創造的思考」「リーダーシップとマネジメント」「生涯学習」「感情的知性と社会的知性」が順に挙がっており、顧客対応では「リーダーシップとマネジメント」「テクノロジー/デジタルスキル」「モチベーションと自己研鑽(けんさん)」「創造的思考」「信頼性と細やかさ」が挙がっている。

 デジタル、マネジメント、創造などがキーワードのようだが、面白いのはマネジメントの最重要スキルと予測されるのがデジタルスキル、一方で顧客対応にリーダーシップとマネジメントが挙がっていることだ。従前は逆で、マネジメントに最もリーダーシップが求められ、現場の対応にデジタルスキルが求められていた。

 しかし、これからはビジネスモデルの構築や意思決定にデジタルスキルが重要であり、顧客対応にマネジメント力が求められる。また、どちらにも「生涯学習」「自己研鑽」という学びの項目があり、変化の速い観光業においては常に新しいものを学び続ける力も重要ということだろう。

 好調なインバウンドを客数だけで終わらせないためにも、こうしたスキルをどう習得していくかといった方法論を早期に検討する必要がある。
(東洋大学国際観光学部教授 森下晶美)

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.12からの転載】