100億円超の大規模改装に2月着手したヒルトン東京お台場(東京都港区、453室)。およそ2年間にわたるこの改装では、全客室およびロビー、メインダイニングや宴会場など、ホテル全域が生まれ変わる。改装に伴い、平均客室単価の引き上げを目指してスイートに次ぐ「エグゼクティブルーム」を増やすほか、国際会議・イベントの誘致拡大を目的に宴会場設備をアジアのライバルホテル並みの水準に引き上げる。総支配人の中里英樹さん(57)は「機能的サービスにとどまらず、“この場所を訪れること自体が目的”となるような、付加価値を強化していく。改装に加え、当ホテルならではのロケーションとホスピタリティーを掛け合わせ、高価格帯で勝負する」と話す。
今回の大規模改装の狙いや立地環境を生かした今後の事業展開などについて、ヒルトン東京お台場の総支配人に25年7月1日就任した中里さんに4月6日、聞いた。

―大規模改装の狙いは。
いくつか理由はありますが、多様化するお客さまのニーズに応え、期待を超える価値を提供することが一番の狙いです。新型コロナ禍以降、滞在や宿泊に求めるお客さまのニーズがかなり変わってきました。より快適でパーソナライズされた(各個人に適した)サービスが求められているように感じます。このようなお客さまの期待に応えるには、ホテルの空間そのものの進化も必要不可欠です。
―主要な改装点は。
もちろんすべてが重要ですが、中でも当ホテルならではの滞在価値を最も象徴するエグゼクティブルーム以上の客室とサービスには特に力を入れています。エグゼクティブルーム以上のタイプは約80室から約110室へ増設し、より快適で特別な時間を提供します。併せて専用ラウンジも東京湾やレインボーブリッジを一望できる館内随一のロケーションへと移設・拡張します。


―そのほかの改装ポイントは。
お客さまがホテルに足を踏み入れた瞬間の印象を決定づけるロビーは、開放感をより一層高めます。調度品や装飾物の色使い、配置を工夫し、レインボーブリッジや東京スカイツリー、東京タワーを背景に広がる東京湾の眺望を楽しめるよう、今まで以上に空間設計に工夫を凝らしました。ロビーに入るとすぐ“主役の眺望”を楽しめる空間へと生まれ変わります。ロビーエリアは今夏をめどに完成予定です。

―国際会議、国際イベントの誘致戦略は。
会議・イベントの会場となるホテル内の大宴会場の改装を来年夏から実施予定ですが、先駆けとして国内ホテルでは最大規模となる幅21.6メートルの巨大LEDスクリーンを今年3月に設置しました。海外のお客さまを迎える国際会議、国際イベントが当ホテルの宴会売り上げに占める割合はおよそ23%です。この割合を28年にはできれば30%以上にしたい。そのためにもアジアの競合ホテルでは当たり前になっているLEDスクリーンを導入しました。国際会議や国際イベントなど各種ビジネスイベントの総称であるいわゆる「MICE(マイス)」の誘致の競争相手には、日本のホテルだけでなく、シンガポールやタイなどアジアのホテルも含まれます。シンガポールやタイのホテルでは宴会場のLEDスクリーン完備は当たり前で日本のホテルはこの点で出遅れていました。今後、アジア各都市間での誘致競争は一層激しさを増すことが予想されます。そうした環境下で選ばれるためには、最新設備の導入やサービスの質を磨き上げ、ハード・ソフトの両面で国際的な競争力を高めていくことが不可欠だと考えています。

―海外マイス誘致の際のアピールポイントは。
食文化や治安の良さ、サービスの質の高さなどの点で、日本のホテルは、アジアのホテルと勝負できると思っています。安全性、治安の良さは誘致の際の“大きな力”になります。
―海外マイス誘致に向けた営業態勢は。
24年から営業部の中に海外マイス担当を4人配置しました。海外マイスはまだまだ伸びると思いますので力を入れていきます。
―インバウンド(訪日客)戦略は。
“東京観光の拠点”としての魅力を活かし、“長期滞在”を増やしていけたらと考えています。都心の主要観光地や空港へのアクセスにも優れた立地を発信し、選んでいただけるホテルにしたいです。現在当ホテルのお客さまの平均滞在日数は1.7日です。海外のお客さまの都内観光の拠点ホテルとなることで、この平均滞在日数を2日に伸ばしたいです。
―全体に占める訪日客の割合は。
シーズンによって変動しますが、年間を通じた平均値としては海外のお客さまは6割前後、国内のお客さまは約4割です。
―その比率はここ最近変わっていない?
この比率はあまり変わっていないですね。個人的にはいいバランスだと思っています。私たちが何より大切にしたいのは、国内外を問わず、当ホテルならではのロケーションや滞在価値を求めてくださるすべてのお客さまです。今後も、為替や需要の変化も注視しつつ、国内外のお客さまが共に心地よく過ごしていただけるよう、ほどよいバランスで伸ばしていきたいと考えています。
―ヒルトン東京お台場の特長は。
一番は景観です。東京都心にありながら東京湾沿いの東京をパノラマに眺めることできる。唯一無二のロケーションだと思っています。全室にバルコニーを完備しており、窓を開けると潮風や汽笛など五感で非日常を感じることができます。バルコニーでくつろげるホテルは都心では貴重だと思います。
―リゾートホテル的な面もある?
当ホテルは東京都心にありながら、目の前に広がる海や開放的なロケーションから、リゾートホテルとしての側面も併せ持っているのが特長です。そのため、時期によってご利用になるゲスト層も変わってきます。ビジネスとレジャー、双方の魅力を備えているからこそ、年間を通じて多様な目的のお客さまをお迎えできることが私たちの強みであると感じています。
―ヒルトン東京お台場の目の前の東京湾(お台場海浜公園)で東京都が始めた噴水ショー「東京アクアシンフォニー」への期待は。
お台場や当ホテルの認知度とともにお客さまの体験価値を向上させ、当ホテルの訪れる動機の一つになることを期待しています。また可能性を探っている段階ですが、噴水が上がるタイミングでのウエディング企画を実現できたらと考えています。

―ホテルの仕事の面白さは。
ホテルマンとして働く一番の醍醐味は、人とのつながりにあると感じています。この仕事を通じて経験できることや成長できることは数多くありますが、中でも一番うれしいのは、お客さまから「また来たよ」と会いに来ていただけることです。実際、別のホテルへ異動することもありますが、場所が変わっても変わらずに訪ねてくださったり、声をかけてくださったりするお客さまがいらっしゃいます。ホテルの機能だけでなく、私という人間を通じて利用していただけるような関係性は、単なる仕事の結果を超えた、私自身の何よりの財産だなと思っています。ホテルは、お客さまに場所を提供するだけでなく、滞在を通じて新たな体験や人との出会いを楽しんでいただける場所ですが、それは働く側にとっても同じこと。お客さまやスタッフ同士も含め、人との関わりを通じて自分自身も成長させてもらえる。そんなシンプルですが温かいやり取りの中にこそ、この仕事の本当の楽しさがあると感じています。
―ホテル業界を目指す人へのメッセージを。
ホテルには毎日、さまざまな国から多様なお客さまが来られます。いろいろな価値観や文化を持つお客さまに接することになりますので、自分自身の視野や考え方を広げたり、深めたりする機会に恵まれた職場環境だと私は考えています。一言で言うと“人間力を高められる”このような環境に身を置きたいと考えている若い人たちがホテル業界で働いてくれたらうれしいですね。今年は例年より少し多く新入社員を採用しました。大規模改装に備え、来年もまた多く採用したいと考えています。









