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京大研究グループ「漢字の手書きが文章作成能力に貢献」 漢検の受検結果を基に読み書き能力を解析

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漢検 「読字から文章力に至る読み書き発達の二重経路モデル」

 

 公益財団法人日本漢字能力検定協会(漢検、京都市)は、漢検が協力している京都大の研究プロジェクトで、漢字の手書き習得が文章力の発達に「独自の貢献」をすることが明らかになったと発表した。

 研究は京都大学大学院医学研究科・大塚貞男特定助教と、村井俊哉教授の研究グループによる「ライフサイクルと漢字神経ネットワークの学際研究」。漢検の「日本漢字能力検定」(漢検)と「文章読解・作成能力検定」(文章検)の両方を受けた中高生の受検データを解析し、漢字(読字、書字、意味理解)と文章(読解、作成)という二つの水準について、読み書き能力の構造的関係性を調べた。

 研究グループは、これまでに漢字能力は「読む能力=読字」、「書く能力=書字(手書き)」、「漢字の意味を理解する能力=意味理解」の3側面から成ると明らかにしており、2006年と16年の漢検受検データを比較したところ「10年間で成人の書字の力だけが特異的に低下していたこと」を公表している。

 近年、社会のデジタル化が進み、文字を手書きする機会が減っていることから、今回の研究では、中高生の漢字能力の3側面と文章読解・作成能力との関係性を調べ、読み書き能力の発達が書字を含む漢字習得にどのように支えられているのかを検討したという。

 研究グループは、2019年10~11月から20年1~2月の期間に漢検と文章検の両方を受検した計719名の中高生(平均年齢16.25歳、女子325名、男子394名)の成績データを解析。その結果「漢字の書字の力が文章作成能力に影響していること」、さらに「漢字の意味理解の力は文章読解力に影響することで間接的に文章作成に寄与するが、書字の力がもつ直接的な影響力を代替することはできない」ことが明らかになったとしている。研究グループは「漢字の手書きに習熟することは、文章作成能力の発達に独自の影響力があり、漢字の意味を理解して読解力を身につけることより文章作成への影響力は大きい」と説明している。

 今回の研究成果について、漢検の山崎信夫・代表理事 理事長は「スマートフォンやパソコンが日常生活に不可欠なツールとなり、『書く』機会よりも『入力する』機会の方が多いという人は少なくない。研究グループは、漢字の手書き習得が文章力の発達に独自の貢献をするという科学的証拠を提供し、手書きができなくなることが言語・認知能力に広く影響を及ぼす可能性を示したとしており、非常に示唆に富んでいる」とコメントしている。

 研究成果は2023年4月、国際学術誌「Reading and Writing」にオンライン掲載された。