カルチャー

空海のことばを一日一語、「日めくり」で堪能 人生の不安を払いのけてくれるような気がする一冊

 日本仏教界のスーパースターとも称される弘法大師・空海。その常人離れしたエピソードや偉業は聞いたことがあるという人も、その具体的な言葉となるとなかなか即座には思い浮かばないのでは。

「小欲の想始めて生じ 知足の心やや発る」

「撫塵は昨なれども不惑は催す」

「まず福智の因を積んで しかるのち 無上の果を感致せよ」

 これらの空海のことばを、1日に一つ、見出し・意訳・解説付きで1ページで紹介した、日めくりカレンダー的な本『空海のことば365日』(保坂隆・著、誠文堂新光社)が発売された。価格は税別1800円。

 ビジネス書などではその圧倒的なカリスマ性を背景に、「迷いを断ち切る」「強い心をつくる」などの「剛」の側面が強調されるが、じつは空海のことばは慈愛に満ち、困っている人、苦しんでいる人の心に寄り添う「柔」の優しさがある。この本ではその両面を堪能することができる。

 365日分の言葉が収録されているので分厚いが、軽い紙を使っていてハンディなサイズにまとまっているので、毎日持ち歩くのも苦にならない。体系的な勉強が嫌いな人や、難しい仏教書や哲学書は避けていたという人でも、わかりやすい解説を読みながら一日一日、心にしみる教えをかみしめていけば、空海の思想の一端にふれることができるはず。読んでいると心が落ち着く気がする一冊だ。