「AIに聞いてみる」が普通のことになりつつある昨今。膨大なデータを背にした回答でも、満足できたりできなかったり、どこまで何ができているのか不明というのが、素人の正直な実感だ。「人間にしかできないことは何か?」という誰もが持つ疑問に社会学者が回答を試みる一冊、『自己との対話 社会学者、じぶんのAIと戦う』(吉見俊哉著、集英社、税込み1210円)が発売された。社会学の大家が「自分のすべての著作を読み込んだAI」と対談するという前代未聞の試みを通して、現代と未来を語っている。
生成AIが爆発的な進化を続ける中、人間の存在意義や学問・教育の意味が問われつつある。長年大学教育の現場に携わっている社会学者、吉見氏は、自らの著作・論文をすべてAIに学習させ、「AI吉見くん」を制作。人工知能の「もうひとりの自分」と、「社会学」「大学」「日本の都市」「世界情勢」をめぐる対話を敢行した。「AIは社会学者になれるか?」「21世紀は、なぜうまくいかないのか?」「成長の限界、未来へのビジョン」などを考察しながら、AI時代に人間が身につけるべき知性を明らかにしている。










