未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」の新連載「弁当の日の卒業生」。「弁当の日」、その日は買い出しから片付けまで全部一人で。2001年に香川県の小学校で始まった食育活動は、約25年を経て全国に広がっています。その提唱者である竹下和男氏が「弁当の日」の卒業生の今をつづります。
▼家庭科は人生の必修教科
小・中学生時代に「子どもが作る弁当の日」を経験した児童・生徒の追跡調査(?)をしてきたこの連載も今回が最終回です。堅いタイトルを付けましたが、家庭崩壊や少子化傾向への対策として根本にかかわる気づきがあったので、ここに記すことにしたのです。滝宮小学校で「弁当の日」を経験したHくんの話です。
もう20年以上も昔のことで、「弁当の日」で思い出すのは一生懸命卵焼きやチャーハンを作ったことぐらいです。両親は「弁当の日」に好意的で、自分の弁当作りに口も手も出さない人たちでした。ただ、困って助けを求めると手伝ってくれました。校長先生が自立を目指して始められたことを理解していました。2年間で11回の「弁当の日」で簡単な食事は作れるようにはなったけど、中・高時代は全く台所に立っていません。大阪府の大学に入学して下宿生活が始まりました。学生に人気の狭くて安い下宿で、そもそも流し台がなく、お湯は沸かせるけれど料理は全くできませんでした。食事は外食中心。洗濯はコインランドリー。そうじは狭いから簡単。でも、一カ月もたたないうちに引っ越すことにしました。一人住まいでも居住空間にゆとりは必要で、衣食住の全般の家事が大切だと痛感したのです。書店で、一人住まいの生活に役立つ本を探しましたが、家事全般について基本の知識・技術について触れてくれている本が見つかりませんでした。そこで思いついたのが小・中学校時代の教科書でした。週末に自宅から教科書を持ち帰り精読しました。
転居後は教科書がバイブルで、すべての家事に役立ちました。家庭科は高校・大学の進学に必要な教科ではなかったけれど、こんなに役立つ生活情報だったとは当時は考えもしなかったのです。「弁当の日」のすばらしさは、大学生の友だちの料理のできなさぶりを見て痛感しました。学生時代にできた彼女と結婚をして共働きです。子どもは1男2女の三人ですが、近くに住む義父母の助けも借りて幸せな生活を送っています。回数は少ないですが、子どもたちに卵焼きやチャーハンを作ることはありますし、子育ては楽しめています。まだ子どもたちを台所に立たせていませんが、もう少しすれば教えるつもりです。「家庭科は人生の必修教科」ですから。
竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。










