【はばたけラボ インタビュー】子どもたちの可能性を広げる教育プログラミングが絶対に必要——ロジカ・エデュケーション代表取締役・関愛さん

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 子どもたちの可能性を引き出す個性的なプログラミング教育事業を展開するロジカ・エデュケーション(大阪府池田市)。代表取締役を務める関愛さんは、多感な少年時代を十勝平野で過ごす。地平線が見渡せる日本有数の広大な畑作地帯で、自分の可能性を信じる、おおらかで雄大な心を育んだ。

 「小学6年の時、大阪府箕面市から北海道士幌町に家族3人で移り住んだ。父親が面白い人で、たくさんの動物と暮らす“動物王国”を北海道に築いたムツゴロウこと畑正憲さんに憧れ、北海道移住を決めた。12歳の少年にとって、北海道は見るものすべてが大阪と大違い。最初に住んだ家の周りは一面畑地で、街灯は一つもない。初めて漆黒の闇夜を体験し、星の美しさを知った」

 このような神秘的な大自然と世間の常識にとらわれない型破りな父の薫陶の中で伸び伸びと育った関さんにとっては、既存の学校教育は少々窮屈だった。家庭の経済的事情もあり、中学卒業後は進学せず、独学でプログラマーの道に進んだ。父親の援助も受けて18歳で起業、30歳で拠点を大阪に移し、事業の拡大に成功する。

 経営するロジカ・エデュケーションは現在、小学生らを対象とするフランチャイズ形式のプログラミング教室を全国約40カ所で展開。教材を提供するパソコン教室なども含めると全国およそ計180カ所の教室運営に関わる。2020年から始まった小学校のプログラミング授業では使用教材を提供。この“ロジカ式”プログラミング教材はこれまでに全国約60地域、約46万人の教材として採用されている。近年は社会の急速なデジタル化を受け、大学入試対策の教材開発にも取り組む。

 これらの関さんの異色の経歴には、少年時代に見つめていた、どこまでも伸びる地平線のように、自己の可能性の広がりを信じて大きな目的に突き進む爽快さ、痛快さがある。学歴に頼らず、“実力”でその道の大家になった、植物学の牧野富太郎、作家の松本清張ら魅力的な “独学者”の系譜に関さんは連なる。

 「中学卒業前後に読んだ国家資格や職業を紹介する本の中に学歴・資格不要の職業としてプログラマーが将来有望とあった。実力で勝負できる世界に飛び込みたかった。学歴・資格不要の文字を見て、僕の可能性の中心は“ここにある”と思い、独学でプログラミングの学習を始めた。新聞配達や農家、建設業の手伝いなどで生活費を稼ぎながらの独学はもちろん困難を極めた。入門書から始めたが何度も挫折しそうになった。原因が分からず一つのエラーに何時間も費やすこともあった」

 「石の上にも三年」の粘り腰で、関さんは顧客ゼロの創業期の危機を何とか乗り切った。現在につながる事業隆盛の端緒をつかんだのは、プログラマーとして頭角を現しつつあった23歳の時。日本トップクラスの都市銀行で新入社員研修の講師を務めた。生徒は世の教育ママらがこぞって入れたがる、いわゆる“一流大”出の若者たち。関さんに引け目はなかったが、研修の効果を考えて、年齢と経歴は秘した。企業研修とはいえ講師に対する最低限の敬意が生徒になければ、3カ月でプログラミングの基礎を身に付けさせる講師の使命を果たすことはできない。関さんはプロに徹した。

 「人に教えることは昔から好きだった。プログラマーで講師をやる人は当時少なかったから、僕に講師のお鉢が回ってきた。短期間でプログラミングの基礎を叩きこむことには苦労すると思ったから、余計な情報はあえて口にしなかった。かなりハードな内容だったので、学生気分の抜けない生徒の中には途中で泣き出す者もいた。年齢は同じだったが、生徒には“幼さ”を感じた。この時、日本の教育システムの課題を自分なりにつかんだことが、事業の幅を広げた」

 この研修をきっかけに関さんはプログラミング学習を軸にした社会人研修事業に力を入れる。さらに子ども向けのプログラミング教室の開催やプログラミング学習教材の開発・提供に事業の軸足を移した。小学生向けのロジカ式プログラミング学習教材は、社会人研修講師の経験でつかんだ日本の教育システムの課題を乗り越えようとする関さんなりの問題意識を反映している。

 「プログラミングとは平たく言うと、コンピューターに“こう動いてほしい”というお願い事を“指示書”として書く作業のことだ。この指示書は、コンピューターと同じ考え方、思考回路にならないと書くことはできない。論理的な思考力を養うにはプログラミング学習が最適だ。ロジカ式は、プログラマーの育成そのものが一番の目的ではない。子どもたちがプログラマー以外の職業に就いた場合にも、プログラミング学習で培った論理的思考力は各自の持ち場で必ず役に立つ。子どもたちが論理的思考力を養い将来活躍できる可能性を広げること。これこそがロジカ式の最大の狙いだ」

 だからこそ、ロジカ式には、プログラミング学習と並んで、子どもたちの目標達成力、コミュニケーション力を高める、それこそ社会人研修で実施するような学習も大切な要素として、しっかり盛り込んだ。

 「いまの子どもは夢や目標のない子が多い。将来どんな職業に就くにせよ、子どもたちの可能性の中心を一緒に見出して広げていけるような教育プログラミングが絶対に必要だ」

 そんな関さんの熱い思いは海を越えて、いま海外に向かっている。「貧困から教育機会に恵まれないアフリカの子どもたちに、ロジカ式のプログラミング教育を提供していきたい。大きな挑戦になると思う」。関さんが少年時代に自覚した可能性の中心は、いまも拡大を続けている。

 せき・あい
 1984年、大阪府箕面市生まれ。96年、両親と一緒に北海道士幌町に移住。2002年、北海道士幌町でITシステム開発を請け負う事業を開始。18年、大阪府池田市にプログラミング教育事業を行うロジカ・エデュケーションを設立。現在、全国の小学校などにロジカ式プログラミング授業を提供している。

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