未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、夏休み明けの学校生活への準備について答えます。
▼夏休みで不規則な生活に どうしたら学校生活にスムーズに戻れる?
【質問】
小学5年生(11歳)の娘がいます。夏休みに入り、夜更かし朝寝坊の生活が常習化してしまいました。また、暑いからといって家の中に居た時間も長く、体力も衰えているのではないかと心配です。夏休み後半から新学期の始まりにかけて、どんなことに気を付けたら、スムーズに学校生活に戻れるでしょうか。
▼夏休み最後の一週間で、「目標を持ってやり遂げること」にチャレンジ
【竹下和男先生の回答】
この娘さんは夏休みになる前から、翌日が休日のときは夜更かしをしたり、翌朝は朝寝坊をしたりしてきたのですよね。親の方も登校日の朝は無理やりにでも、遅刻しないように起こしたのに、休日の朝は「まあ、いいか」と朝寝坊をさせてやったのでしょう。
娘さんにしてみると、休日のたびに大目に見てくれたから、夏休みは連日実行しているだけです。夏休み中の海水浴や、友だちと遊ぶ約束をした日には、早寝早起きができていたのなら、深刻に心配することはありません。こんな一面が、子どもにとっての“心の居場所”づくりにもなっていると考えられます。
2学期が始まると、夏の疲れが出て少々体がだるくなることもあるかもしれませんが、数日でスムーズに学校生活に戻れます。
教え子の中には時々、夏休みになると早寝早起きをする子どもがいました。夏休みには、やりたいことが一日中いっぱいあるから、夜更かし朝寝坊は、明日の遊びに差し支えるというのです。いつも学校生活より家で遊ぶことを優先したい子どもに見られる傾向でした。
さて、夜更かし朝寝坊の常習化や、屋内にこもっての運動不足は明らかに体力を低下させます。スマホやパソコン、タブレット、ゲームに夢中になって、生活のリズムが乱れているのなら用心してください。スマホ等で脳が快楽を得続けると、狂った体内時計を戻すことが難しくなっていきます。生活リズムを整える意欲が湧いてこないのです。実は不登校が始まるタイミングは、夏休み明けが一番多いのです。
そこで提案です。「夏休み最後の一週間、家族全員のご飯とみそ汁の朝ごはんをあなた1人で作って」と頼んでみませんか。成功報酬にお小遣いやご褒美を約束してもいいです。安心して朝食を任せられるようになるまでには数日かかるかもしれませんが、子どもって目標を持たせて任せると結構やり遂げるものです。献立や買い物、調理や盛り付けや片付けも、教えれば驚くほど吸収していきます。
親が仕事に行く前に食べてもらう朝ごはんを作るには、早起きをしなくてはいけません。そのためには当然、早寝をします。繰り返し練習をしていくうちに、調理技術は上がっていきますし、段取り力もついていきます。
大切なことは、適切なステップを踏んで練習させることです。いきなり丸投げをして、失敗を不用意に叱責(しっせき)すると、意欲がなくなります。
それから、本番初日には親が上手に喜んであげましょう。うまくできたところを大げさに褒めてあげてください。それが一週間続けば、娘さんはお小遣いやご褒美以上の、一生の宝物を身につけていると思います。もちろん、元気に登校を始められます。
竹下和男(たけした・かずお)
1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、東京農業大学、グリーン・シップ、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。