世の中の事象はすべて“数式”で解説できる――。『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)が、8月21日に刊行された。著者は冨島佑允氏。京都大学・東京大学大学院を卒業後にメガバンクに就職し、クオンツ(金融工学や統計学などの数式を駆使して金融市場の分析や予測を行う専門家)としてキャリアを構築。理系の東大・京大生や、数学を多用する職業の人たちが数式をどう捉えて使っているかを熟知している。
一方で、日ごろからビジネスの場で、文系の同僚や上司とコミュニケーションする際に、数字や数式を持ち出すだけで構えてしまう人が多いことを課題と感じ、ビジネスの現場における「数式への抵抗感」を少しでも減らしたいと、同書を執筆した。
日本の数学教育では、数式が誰のどんな思いから生まれ、世の中でどう役立っているのか分からないまま、公式を当てはめて正確に計算する練習を沢山やらされる。そのため、数学嫌い、数学アレルギーのような人が一定数生まれてしまうのではないかと著者は懸念している。
同書では、「“数式読解力”=数式を通じて物事の本質を見抜く力」と言う言葉を定義。数式が今の世の中に変化を起こしている事例を紹介していく。事例はAI、アート、太陽光発電、お金の運用、宇宙など広範囲。使われている数式も全て異なるが、数式が世の中を変えるプロセスは皆同じだと冨島氏は指摘する。
ビジネスパーソンであれば、「数式読解力」を身に付けることにより数式への抵抗感がぐんと低くなり、社内の理系人材とのコミュニケーションも取りやすくなる。社内の文系人材と理系人材を結びつける橋渡し役として活躍したり、社外のIT企業やフィンテック企業なども巻き込んでアイデアを形にしたりしていくなど、活躍の幅を広げる可能性も期待できる。税込み1980円。