日々のニュースで見て知っているつもりのガザやウクライナの現状。もっとも、他の地域も含めて命を削るような生活を強いられている人々の苦しみが理解できるとは到底言えず、食べるに困らない日常を送っていても、彼らのためにできることは何だろうと考えるのが関の山だ。だが、こういう数字を知る衝撃はもう一歩踏み込んだ行動をとるきっかけの一つになりそうだ。国連開発計画(UNDP)の新たな調査によると、全世界の貧困層のうち、暴力的紛争にさらされた国に住む人々は4億5500万人にも達している。
国連開発計画とオックスフォード貧困・人間開発イニシアチブ(OPHI)が共同で発表した今年の報告書は、112カ国、63億人を対象とする多次元貧困に関する統計調査や、紛争と貧困の関係に関する緻密な分析が特徴。多次元貧困に苦しむ11億人のうち、ほぼ5億人が暴力的紛争にさらされている国に住んでおり、紛争影響国の貧困率はそれ以外の国のほぼ3倍に上ることが判明した。
「近年、紛争は激化・拡大し、死傷者数は過去最多を記録。何百万人もの人々が避難し、生活と生計に大きな混乱を引き起こしている」とアヒム・シュタイナーUNDP総裁。戦争状態の国は、多次元貧困の指標すべてで欠乏の度合いが高くなっているといい、例えば、電力を利用できない貧困層の割合は、比較的安定的な地域で20人に1人強であるのに対し、紛争影響国では4人に1人を超える。同じような格差は子どもの教育(4.4%に対し17.7%)、栄養(7.2%に対し20.8%)、幼児死亡率(1.1%に対し8%)でも明らかになっている。
全世界の貧困層11億人の過半数にあたる5億8400万人は18歳未満の子ども。成人の貧困率が13.5%であるのに対し、子どもの貧困率は27.9%に上る。これら11億人のうちの大半は、適切な教育(8億2800万人)も、住宅(8億8600万人)も、調理用燃料(9億9800万人)も得られていないという。
「紛争下では貧困削減のペースも遅くなるため、貧困層がさらに取り残される結果を招いている。こうした数字は私たちに否応なしの対応を迫っている。平和に投資しない限り、貧困に終止符を打つことはできないからだ」とサビーナ・アルカイアOPHI事務局長は警告している。