「子どもたちが日常をしっかり見ていて、その上で社会や自然、そして人間に対するしっかりとした眼差しを持っていること、その眼差しによって表現された作品が数多くあって驚きました」。大阪・堂島リバーフォーラムで行われた小学生絵画展を審査した奈良国立博物館長の井上洋一さんは、第一声からその感銘を語った。
堂島こどもアワードは今年で6回目。毎回異なるテーマで絵画を募集しており、今回は「ドキドキッとした思い出」「あったらいいな、こんなとこ」「自然だーいすき」の3つ。子どもたちの豊かな発想と観察力が光る作品が数多く揃った。
■低学年の部・大賞「発表ドキドキ」
3年生の橋本絃さんが描いた「発表ドキドキ」が大賞に選ばれた。日記を持つ橋本さんの手元が大きく描かれ、発表の臨場感が伝わる点が評価された。井上さんは「緊張しながら発表している雰囲気が構図にしっかり表れている。おそらく堂々と立派に発表できたのでしょう」と解説した。
■低学年の部・優秀賞「布団の中で繋がる宇宙」
1年生の木谷郁海さんは、布団の中に広がる宇宙をひっかき絵で表現した。井上さんは「寝るときにふと見ると布団の中にこんな世界が広がっていたらいいな、と。この発想はわれわれにはない。われわれ大人が子どもたちの感性に学ぶことが必要なんじゃないか」と称賛した。
■高学年の部・大賞「いつまでも元気でいてね」
6年生の永井秀弥さんは、縄文杉のような緑深い巨木とそれに触れる人間の姿を描き上げた。もう一人の審査員である日本画家の千住博さんは「大木と出会って手を触れた時の温度感や空気感が手に取るように伝わってきた。まるで私たちもこの場に一緒に同行したような気すらした」と高く評価した。
■高学年の部・優秀賞「豊かな世界 いつまでも」
5年生の玉置太陽さんは、水辺の風景とそこに集う動物たちを丹念に描写した。千住さんは「リアルに緻密に描くことによって、むしろ不思議な世界になっている。色彩も美しければ組み合わせも非常に神秘的で、人間の心の奥深くにある遠い記憶に触れるようだ」と見解を述べた。
審査を終えた千住さんは、「どの作品も“実感”に基づいた感動があって、その感動の上に“観察”が脳裏に刻み込まれて、そのことを冷静に夢中になって画面に再現している。そのリアリティーに圧倒された」と伝えた。また、審査では「題名も作者の名前も一切見ない」形式で行った千住さんと「作者のコメントを読み意図を汲んで納得して作品に向かった」井上さんの両者の意見が一致。「ほぼ即決」で受賞作品が決まったことについて、千住さんは「美術の本質を改めて考えるぐらい、とても面白い経験だった」と感想を述べた。
第6回堂島こどもアワードは国内外小学生の絵画作品を募集。10月中旬の審査を経て、11月9日に表彰式、11月10日〜17日に入選作品の展示会を行った。受賞作品は大賞低学年・高学年各1人、優秀賞低学年・高学年各1人、審査員特別賞低学年3人・高学年3人、 佳作低学年・高学年各10人、入選低学年9人・高学年11人。