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AI普及に身近な助言者必要 活用不十分の企業で需要増加 人材派遣会社部長・網野郁矢氏

AI時代の人材需要動向を語った綜合キャリアオプションの網野郁矢さん

 米企業開発の高性能人工知能(AI)モデル「クロード・ミュトス」は、システムの脆弱性を見つける能力が高くサイバー攻撃に悪用される恐れから、提供先が限定されている。日本では政府機関と一部金融機関がこの「ミュトス」へのアクセス権を取得したことが6月、ニュースになった。高性能AIの最先端モデルには「危険性」をはらむ一種の鬼子的側面もあるようだ。

 一方、業務の「効率性」向上のため通常モデルのAIを導入して間もない企業では「AIを十分活用しきれていない」という悩みが浮上しているという。

 「何億円もかける大規模プロジェクトだけではなく、AI導入初期段階の企業の円滑なAI活用開始に伴走してくれるような基礎的AIスキルを身に付けた人材の需要が高まっています」

 こう指摘するのは、人材派遣会社・綜合キャリアオプション(東京都新宿区)のAnewS(アニューズ)IT事業部長・網野郁矢さん(31)だ。

 網野さんは「業務の効率性向上のためそれなりのコストをかけてAIの組織導入を進めたものの、AI活用の成果が思ったより上がっていないと考えている中小企業は少なくありません。そのようなAI導入間もない企業は特に高度なAIスキルを持つ人材を求めてはいません。AIを実際に使って業務を効率化する実例を見せてくれたり、AI初心者が活用の初動でつまずく気になるところを気軽に質問できたりするなど、いわば教授レベルではない“メンター(身近な助言者)”を必要としています。当社はそこにAI時代の新たな需要を見いだしました」と話す。

 このようなメンターになり得る人材が、網野さんのアニューズIT事業部には約180人在籍している。その一部が、販売接客の仕事をしていた人や飲食店のホールで働いていた人などAI未経験者。AIの基礎的スキルは社内の特別な研修で身に付ける。

 このAI研修の期間は2カ月。AI業務アプリの制作・活用スキルの取得を目標に置いている。

AIの基礎的スキルを持つ人材の需要は「今後伸びる」と予測する綜合キャリアオプションの網野郁矢さん=東京都新宿区、2026年6月22日

 すでに派遣された企業で働いているメンバーは、AIを活用して営業用の提案資料を作ったり、見積書を自動作成するアプリを制作したりするなど活躍しているという。

 網野さんは「現場の事務的な課題解決にAIをうまく活用しているようです。未経験から育成したメンバーのAIスキルは基本レベルですが、AIの本格的活用に慎重な企業やまだAIを十分活用しきれていない企業では、AIの基本的な活用でも業務の効率性を高める余地はまだまだあります。AIの基礎的スキルを持つ人材の需要は当面伸びるのではないでしょうか」と予測している。

 網野さんは「AIの初期導入段階を過ぎた派遣先企業が、社員のAI習熟でメンターを必要としなくなる可能性はもちろんあります。また簡単な指示を与えるだけで、これまで人間がやっていたことの多くを自律的にこなすAI自体の進化もあるでしょう。AIの進化に応じて企業側の求める人材も当然変わります。人材派遣会社としてはそこをしっかり見極めていかなければなりません」と語る。

 未経験者を育成して、高付加価値なエンジニアにしてから派遣するAnewSITの構想は、「顧客企業の人材需要に対応するだけでなく、当社社員の活躍する幅を広げる目的もあります」と網野さんは強調する。

 AIの基礎的スキルを身に付けたエンジニアの今後のキャリア形成の在り方については「これからAIは多くのビジネス場面で使われると思いますので、技術を扱う部署でなく営業部門などに進んだとしても、研修で身に付けたAIの基礎的スキルは無駄にはならないはずです。AIの基礎的知識を生かして営業をはじめさまざまな分野で活躍していただきたい」と話した。

 たとえ未経験でも意欲の高いエンジニアを増やすため、綜合キャリアオプションは4月から、AI未経験者を含めAIに関心がある人を対象に人材の一般募集を始めた。随時応募可能だ。

 AIが社会のさまざまな分野に浸透している現在、キャリア形成の第一歩で「AI入門」の戸をくぐる人は今後増えるかもしれない。