日本国内で行われている数多くの発掘調査の成果を国民に知らせ、埋蔵文化財の保護について理解を深める目的で文化庁が開催している「発掘された日本列島展」。今年で29回目だ。同展の図録の編集を担当した文化財調査官の大澤正吾さんが中身を詳しく解説してくれた。
国宝級の発見、2023年は考古学のニュースが熱い
この1年、豊富な考古学系のニュースが続いている。その中でもひときわ大きな話題となったのが、奈良県富雄丸山古墳の調査成果だ。「これまで類例がなかった盾の形をした銅鏡が見つかった。一緒に、日本で一番長い蛇行剣も見つかりました」。副葬品の優秀さに加えて、古墳時代の社会を考える上でも重要な発見だという。古墳時代では他に、山口県下松市の天王森古墳という古墳から大量の埴輪(はにわ)が出土した。「優秀な埴輪群像」で注目を集めている。
なぜ私たちは、日本列島の埋蔵文化財を知る必要があるのか。その問いに、「自分達のルーツを知るため」と答えてくれた大澤さん。「私の考えなんですけれども、(現代は)国際化、多様化していく時代。その中で、自分達がどういうルーツを持って今ここにいるのかを教えてくれるのが発掘遺構、発掘遺物だと考えています。なじみがないものに見えても、日本列島で生活してきた人たちの痕跡。その点で、私たちの今の生活ともつながっている。自分達のルーツを考えるきっかけにしてもらえたらうれしい」
そこで役立ててほしいのが、『発掘された日本列島2023』だ。「図や写真を使い、個々の遺物について、どういうものかに加えて、この遺物・遺構が歴史的にどんな意味があるのか、なぜ大事なのかも、極力分かりやすく伝えられるように埋蔵文化財部門が頑張って作った本です」
一冊で3つの地域と、10の遺跡、2つの文化を丁寧に紹介している。「こういうものが発掘されているんだ、自分の地元ではこういう遺跡があるんだと知っていただければ」