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他者への偏見、受容や差異についても考えさせられる『ザ・ホエール』/ナイキのスタッフたちが起こした奇跡とは『AIR/エア』【映画コラム】

『AIR/エア』(4月7日公開)

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 1984年、ナイキ本社に勤めるソニー・バッカロ(マット・デイモン)は、CEOのフィル・ナイト(ベン・アフレック)から、バスケットボール部門を立て直すよう命じられる。しかしバスケットシューズ界では市場のほとんどをコンバースとアディダスが占めており、立ちはだかる壁はあまりにも高かった。

 そんな中、ソニーと上司のロブ・ストラッサー(ジェイソン・ベイトマン)は、まだNBAデビューもしていない無名の新人選手マイケル・ジョーダンに目を留め、一発逆転の賭けと取引に挑む。

 アフレックが、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)以来の盟友デイモンを主演に迎えて監督し、ナイキの伝説的バスケットシューズ「エア・ジョーダン」の誕生秘話を映画化。

 ナイキの企業理念やスタッフたちの熱い思いが起こした奇跡を描く、あたかも「プロジェクトX~挑戦者たち~」を思わせるような内容。この手の映画は、観客がすでに知っている結果に至るプロセスを、いかに興味深く見せるかにかかっているが、その点では、知られざる逸話をちりばめながら、まるで勝負の行方が分からないスポーツ映画のような感覚で盛り上げる。

 アフレックは、1979年から80年にかけて発生した在イランアメリカ大使館人質事件を描いた監督・主演作『アルゴ』(12)でアカデミー賞の作品賞を得ているが、今回も見事な実録物に仕上げている。

 84年の世相を映すオープニングの映像や、ストラッサーがしみじみと語るブルース・スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」の意味など、当時を知る者にとっては懐かしさを感じさせるような、時代を表す描写も巧みだ。

 ナイキのスタッフたちにも増して、物語の鍵を握る存在のジョーダンの母デロリス役のビオラ・デイビスが好演を見せる。

(田中雄二)