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【週末映画コラム】3時間26分が長く感じない『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』/人間とAIの問題に一石を投じる『ザ・クリエイター/創造者』

『ザ・クリエイター/創造者』(10月20日公開)

(C)2023 20th Century Studios

 2075年、人間を守るために開発されたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。人類とAIの戦いが激化する中、元特殊部隊のジョシュア(ジョン・デビッド・ワシントン)は、人類を滅亡させるAIを創り出した「クリエイター」の潜伏先を突き止め、暗殺に向かう。

 だがそこにいたのは、幼い少女の姿をした超進化型AI(マデリン・ユナ・ボイルズ)だった。ジョシュアはある理由から、暗殺対象であるはずのAIをアルフィーと名付け、守り抜くことを決意するが…。

 『GODZILLA ゴジラ』(14)はもちろん、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(16)でもドニー・イェンを出演させるなど、アジアを強く意識していたギャレス・エドワーズ監督。今回も彼独特の摩訶不思議なアジアのイメージが見られる。

 その中で描かれる、ロスを爆破されたアメリカはAI撲滅を叫び、ニューアジアと呼ばれる東南アジアを思わせるエリアはAIと共存しているという対立構造を見ていると、何やらベトナム戦争や同時多発テロを想起させるところがあり、類型的な感じがしたのは否めない。

 そして、結局はジョシュアがアルフィーに感化される、つまりミイラ取りがミイラになる話なのだが、果たして幼い少女の姿をしたAIを殺せるのかというジレンマを描くことで、最近何かと騒がしい人間とAIの問題に一石を投じるところはあったと思う。

 また、『メッセージ』(16)『ブレードランナー 2049』(17)『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)のドゥニ・ビルヌーブ監督同様に、エドワーズ監督の特徴のある近未来のビジュアルが見どころの一つになっている。

(田中雄二)