『ブルックリンでオペラを』(4月5日公開)
精神科医のパトリシア(アン・ハサウェイ)と現代オペラの作曲家スティーブン(ピーター・ディンクレイジ)夫妻は、ニューヨーク、ブルックリンで暮らしている。
そんな中、人生最大のスランプに陥ったスティーブンは、愛犬との散歩先のバーで、風変わりな曳舟(ひきふね)の船長カトリーナ(マリサ・トメイ)と出会う。
カトリーナに誘われて船に乗り込んだスティーブンが体験したある出来事によって、夫婦の人生は劇的に変化していく。
ハサウェイがプロデューサーを兼任したロマンチックコメディー。監督は『50歳の恋愛白書』(09)『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』(15)のレベッカ・ミラー。
スランプのオペラ作曲家と潔癖症の精神科医の夫婦、前夫との間に生まれた息子、恋愛依存症の船長、移民の家政婦とその娘、コスプレーヤーでレイシストの義父といった風変わりな人たちを登場させ、愛の形が相手によってどう変わるのかを描いていく。
ドラマと劇中オペラ、作曲家と船長と若いカップルの関係を並行して描く手法がユニーク。ミラー監督によれば、往年のスクリューボールコメディーやビリー・ワイルダーの映画を意識したのだという。(※レベッカ・ミラー監督インタビュー掲載中)
ディンクレイジの存在が現実離れ感を醸し出し、話が進むに連れて印象が変化するカトリーナをトメイが好演している。「She Came to Me」という原題が示すように、実は主役はカトリーナと言っても過言ではない。
また、「誰の人生もきっとオペラみたいに劇的だ」(スティーブン)、「ロマンスに弱いの。人の話でもね」(カトリーナ)などのせりふも面白い。
加えて、挿入歌「KEEP ON THE SUNNYSIDE=陽気にゆこう」とラストに流れるブルース・スプリングスティーンによる主題歌「Addicted to Romance=ロマンス依存症」もドラマの内容と重なって効果的。
映画全体を通して、ウエルメイドなヒューマンコメディーという印象を受けた。
(田中雄二)