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中小企業の6割以上、「生成AIを活用できていない」 大同生命調査、導入のコツは「身近な定型業務による成功体験の積み重ね」

 大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2026年1月度のテーマは「中小企業の生成AI活用」。全国の5082社の中小企業経営者を対象に、1月5日から30日にかけて、訪問、またはZoom面談で調査を行った。

■半数以上が「DX推進の必要性を認識」

 全体として景況感については、「現在の業況」(業況DI)がマイナス10.2ポイント(前月差マイナス2.1ポイント)と悪化、「将来の見通し」(将来DI)は4.3ポイント(前月差プラス0.8ポイント)と改善した。

 企業が経営環境の変化に対応するために、AIなどのデジタル技術を活用し、業務効率化や働きやすい環境づくりを実現する「デジタルトランスフォーメーション」(以下、DX)について「名称・内容ともに知っている」企業は38%で、前回調査(2025年1月)から1ポイント増加。従業員規模別に見ると、21人以上の企業で66%、11~20人の企業で44%、6~10人の企業で36%、5人以下の企業で27%と、規模が小さい企業ほど認知度は低かった。

 DXの推進状況について「既に推進している」 企業は23%だったが、「検討中または推進の必要性を認識している」企業も29%。合わせて5割以上の企業でDX推進の必要性を認識していた。自社の業況別で見ると、「業況が良い」企業ではDXを推進している割合が多かった。DX推進の具体的な内容(複数回答)の上位3位は、「ペーパーレス化(FAXや郵送廃止)」(63%)、「営業、販売ツールとしてHP・SNSの活用」(45%)、「電子決済の導入」(36%)。AIについては、「生成AIの活用」(29%)、「AI(従来型)の活用」(21%)だった。

■課題が多い「生成AIの導入」

 人が与えた大量の学習データをもとに結果を予測したり、あらかじめ決められた行為を自動的に行う「従来型のAI」。これに対し、AI自ら学習を重ね、人間が与えていない情報やデータもインプットし、新たなオリジナルコンテンツを生み出す「生成AI」。「生成AIの活用状況」は、「活用したことがない」(60%)と「過去に活用していたが、現在は活用していない」(2%)を合わせ、全体の62%の企業が活用していなかった。従業員規模の小さい企業ほど活用度が低く、業種別では「建設業」「運輸業」の活用度が他業種と比較して低かった。

 活用している2450社に具体的な内容(複数回答)を聞くと、「文書・資料作成(71%)」が最多。以下、「データ分析」(35%)、「議事録作成」(25%)、「動画・イラスト作成」(25%)、「企画などの発案」(22%)、「顧客対応」(16%)と続いた。

 生成AIの業務取り入れ状況別に、生成AI導入の課題についても聞いた。その結果、「生成AIを検討している(未導入)企業」(957社)は、「取り入れている企業」(1419社)と比べて、「生成AIに詳しい人材がいない」(36%)、「ノウハウがない」(40%)、「どの業務に活用できるかわからない」(24%)を選択した割合が高かった。

 「年間予算」では、46%とほぼ半数の企業が「無料ツールのみ(0円)」の導入にとどまり、「10万円未満」が21%だった。「必要な支援策」では、「活用事例の紹介」「低コストで利用できるツールやサービスの提供」「専門家による相談・サポート体制の整備」の回答割合が高かった。

■求められる「サポート体制」「中小企業向け支援策」

 生成AIの活用について経営者たちからは、「情報漏洩などのセキュリティー面が課題。社内ガバナンスやルールを決める必要がある」(建設業・宮城)、「導入時の資金や人材体制が不明で不安」(情報通信業・東京)など導入に慎重な声も。一方で、「生成AIを活用していない会社としている会社の差は今後大きく開く。いち早く準備することが業務拡大につながるため急いで検討している」(製造業・静岡)と、導入を急務と捉える経営者もいた。また、「既に導入しているものが適切なものかどうかの判断が難しい。そういう相談をしたいが、どこも導入までのサポートばかりで相談先がない」(製造業・静岡)、「専門家のサポートがあれば、業務に取り入れていきたい。AIについての勉強会などがあれば参加したい」(建設業・愛知)、「必要性はあるのかもしれないが、中小企業ではそこまで手が回らないし予算もあてられないので、中小企業向けの施策があったらよいと感じる」(小売業・大分)と、サポート体制や中小企業向け施策の整備を求める声もあった。

 調査の結果からは、中小企業の生成AI導入は正にこれからという現状が浮かび上がった。調査を監修した神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、その一方で多くの導入企業が、業務効率化やコスト削減などの成果を実感していることに注目。生成AIは“大規模投資不要”で、“専門人材がいなくても小さく始められる”ことを挙げ、「生成AIの導入は、慢性的な人手不足に悩む中小企業にとって、“第二の人材”を確保する最も有効な手段です」と指摘する。情報漏えいや出力の正確性など、生成AIに潜在するリスクや課題はあるとした上で、導入のコツは、社内文書・マニュアル・メールひな型など、「身近な定型業務で成功体験を積む」ことだとアドバイス。自治体・商工会議所・金融機関・保険会社などが提供する無料セミナーや支援メニューも積極的に活用することも推奨している。