■体力の衰えは40歳からではなく20歳代から始まっている
いつまでもあると思うな親と体力!
私自身は両親がもう他界していますので、身近にいる人はいつまでもそばにいないことを、身に染みて感じています。人の寿命には限りがありますから。
体力もまた然りです。自分の体力はいつまでも続くと思いがちです。特に、20代30代は疲れ知らずのような年代ですので、無理が利きます。よほどの無理をしない限り、筋力の低下や内臓の疲労は最小限に抑えられます。また、疲労の回復も早い年代ですので、自分の体力に陰りを感じないと思います。それでも、体力が確実に低下していきますので、5年や10年くらいの単位で体力の変化を振り返ることが大切です。
最近は、スマホを見ながら歩いている人を多く見かけます。電車に乗ると、ほとんどと言っていいほど、スマホを見ています。スマホ依存症が社会問題になっていますが、意識を外へ向けすぎると、体力があっても精神に異常をきたしやすくなります。WHOによると、世界では5人に1人が、精神状態に不安を抱えているとのことです。20歳代30歳代に病気をする人の多くは、睡眠不足が背景にあります。寝る直前まで、コンピュータ関係の仕事をしていると、睡眠が浅くなり睡眠の質が悪くなります。体力の衰えは20歳代から始まっていますので、過信は禁物です。
20歳から30歳代の人は、JIJICO内にあるコラム「青春時代の体力転換期は26歳?体力低下を防ぐ秘訣はあるのか!?」をご参照戴きたく思います。
■40歳代50歳代は歩く時の姿勢が大切!?
40歳代50歳代は、人生で最も忙しいときかもしれません。月並みな言い方ですが、脂が乗りきっている時期です。社会に最も必要とされかつ動き回れる年代と言えます。体力の低下を感じつつも、まだまだ大丈夫だと思える人が多いと思います。
長い時間忙しく歩き回るために、ついつい荷物が多くなってしまう人が多いように見受けます。来院時に重い鞄を片手で持ってくる男性は、少なくありません。女性は、大きな荷物を肘に引っ掛けるスタイルが多いように感じます。いずれも、体に傾きが出る歩き方をしています。
体の軸が安定しないと、左右の筋肉を均等に使用しないため、歩いて移動する間に早く筋肉疲労が生じます。その生活が長期間に及ぶと、背骨にゆがみが出る場合もあります。膝痛、腰痛や肩こりへと不調が発展して、内臓の疲労も早くなりますので、夕方には強い疲労感を覚えることになります。
体力がある20歳代30歳代と比べると、40歳代50歳代は下肢の筋力が衰え始め、上肢の筋力も落ち始めます。運動量が落ちているにも関わらず、活動範囲が変わらず休憩時間もさほどない状態で一日中労働する生活は、病気の温床を作っていると言えます。
40歳代は、体力の衰えは感じるものの、体力の低下をイメージすることが難しい年代です。50歳代は、体力の衰えを感じるものの、人生の経験値が上がっているので、無駄な動きをしなくなり、体力の衰えをカバーできる年代です。
しかしながら、30歳代と同じ生活を続けていると、病気を発症する確率が高くなります。いわゆる生活習慣病が、自分の生活に立ちはだかります。生活習慣病を回避するには、体力に応じた生活スタイルに変えることが一番の対策ですが、それができない年代でもあります。
40歳代50歳代の人が体力低下を防ぐためには、歩く時の姿勢が大切です。仕事中重い荷物を持って会社内を歩くことは労働です。重い買い物袋を持って歩くのも労働です。労働は、体力を消耗して筋力のアンバランスを生みやすい傾向がある動作です。荷物は背負うようにして両手に物(スマホなど)を持たず、背筋を伸ばし、毎日30分程度歩くようにすると、筋力低下の防止につながります。
40歳代50歳代になり、体力の衰えを感じ始めたら、毎朝ラジオ体操をすることがおすすめです。子供の頃はどこも辛くなかった運動が、とても辛いまたは出来ない運動があることを実感すると思います。可能な人は、15分から30分ほど手に何も持たないでウオーキングすることが筋力低下の防止対策になります。
自分のためだけに、30分ほど、筋力低下防止に時間を使いましょう。
60歳代の体力をイメージしたい人は、JIJICO内にあるコラム「人生100年時代を生きる体力の転換期は62歳?体力低下を防ぐ秘訣はあるのか!?」をご参照戴きたく思います。
■お尻のポケットに物を入れて歩くと腰痛になる?
ヒトは、左脳が支配する右手側が利き手になると考えられています。右手に物を持って歩くと、右半身の筋緊張が強くなります。重い物を持つと体が右へ傾き、腰の筋肉(腰方形筋・腹斜筋)の緊張が強くなるので腰痛を引き起こしやすくなります。
腰痛で来院される人の中には、財布にカードなどの物を沢山詰めて、お尻のポケットに入れる男性が多いように思います。右利きの人は右のお尻に入れます。この生活スタイルは、腰痛を引き起こしやすいと言えます。右のお尻の筋肉(殿筋)の疲労が強くなり、反対側の筋肉との左右差が大きくなりますので、歩行に支障を生じます。特に、大中小ある殿筋の中で、中殿筋の筋力が低下すると体が傾くような歩き方になります。
一般的な正常歩行は、骨盤が水平に保たれることで、まっすぐ歩くことができます。自分がまっすぐ歩いているかどうかを、自分で判断するのは難しいと思います。自己判断する方法は、いくつかあります。
1.道路を歩いているとき白線の上をしばらく歩いてみる
歩く際は、足元の白線を見ないで、少し遠くまで続く白線を見ながら背筋を伸ばして歩きます。まっすぐ歩けなかったら、重心が傾いていると考えて良いでしょう。
2.ショウウインドウに映る自分の歩いている姿勢をチェックする
背筋が伸びているかを確認することができます。
3.窓に映った自分を見ながら足踏みする
自分の姿を見ながら背筋を伸ばし、膝を開かないようにして、坐布団くらいの四角い枠の中で、1分ほどその場足踏みします。枠の中から離れて行くようなら、筋肉が左右対称ではありません。
40歳代50歳代の人に、トレンデレンブルグ歩行(筋力が弱い方の下肢側で立った時に 骨盤の水平位を保つことができず反対側下肢の骨盤が落下する現象)の兆候が表れ始めたら、筋力低下を示すサインです。低下している筋肉の強化が必要になります。(股関節外転動作時における中殿筋の筋活動の左右差 『理学療法科学』 31(2): 285–288,2016参照)中殿筋は、チンパンジーのように足を少し外へ広げる働きをします。同時に、骨盤を水平に保つ働きを担っています。
まっすぐ歩くためには、お腹にある3つの腹筋(大腰筋・小腰筋と腸骨筋)と大腿部にある4つの内転筋(長・短・大内転筋と薄筋)の力も必要です。腹筋や股関節周囲の筋肉が協調しなければ、まっすぐ歩くことが困難です。トレンデレンブルグ歩行の解消には、上記筋肉の強化が必要です。
中殿筋等の筋力低下を防止するためには、右利きの人がまっすぐ歩くとき、左足やお腹の左側に力を入れて(意識して)、太ももの内側に力を入れましょう(意識しましょう)。毎日歩くことを注意するだけで、筋力低下対策になります。
■筋肉の左右差を解消する方法はある?
利き手が右の人は、右足が利き足となる傾向があります。左右の筋力に差が現れると、痛み等を引き起こします。上半身の筋力(僧帽筋・広背筋)に差が現れると、肩こりや頭痛になります。腰部や股関節の筋力(腰方形筋・中殿筋)に差が現れると、腰痛や膝痛が生じます。
左右の筋力を均等にするポイントは、利き手や利き足ではない方から動作を開始することです。
右が利き手の人が上半身を強化するためには
1.洋服は左から着脱を始める
2.左手で歯磨きをする
3.左手で字や絵を書く
4.左手で箸やスプーンを使う
5.お風呂でかかり湯をするとき左手で行う
右が利き足の人が下半身を強化するためには
6.ズボンは左から着脱を始める
7.ズボンは立ったままで左から着脱を始める
8.靴下は立ったままで左から着脱を始める
9.自転車を漕ぎ出す時左足から始める
などなど、つまり右から行っている動作を極力左から行うようにする、または右で行っていることを左で行うことが、大きな対策と言えます。特に、片足で立つとき中殿筋が大きな役割を担っていますので、片足で立つとぐらつくという人には有効な対策です。
身近で毎日行っていることを、出来そうなことから始めてみることです。何か月、何年もかかると思いますが、少しずつ出来るようになります。うまく出来るようになったら、かなり左右差が解消されていると思います。
上半身が強化されれば、肩こりや頭痛、下半身が強化されれば腰痛や膝痛が解消されているはずです。継続して行える人は、精神状態が穏やかになり、何事にも前向きになっている印象です。左側は右脳が支配していますので、脳内のバランスも良くなり、精神活動にも有効ではないかと考えています。
60歳代後半になると、下半身の筋力が衰えて片足で立てない(男性 65-69歳1.25 % 女性 65-69歳2.76 %)という人が出てきます。
70歳代になると、上半身の筋力が衰えて指先に力がうまく入らなくなります。
80歳代になると、いろいろなことが面倒になり、左右差を気にして生活することは難しくなる年代です。
上記対策は、40歳代50歳代の人にうってつけではないかと思います。
70歳代、80歳代、90歳代をイメージしたい人は、JIJICO内の下記コラムをご参照戴きたく思います。
70歳代に関するコラム「78歳は体力低下の転換期!?70歳を過ぎたら日常生活動作と深呼吸を大切に」
80歳代に関するコラム「自立した生活が困難になるのは85歳!? 80歳になったら手を振って歩き 良く噛む事をこころがけましょう」
90歳代に関するコラム「110歳まで生きるためには何が必要!? 90歳代になったら必要なことは筋トレ?」
■鍼灸治療やヨガ(YOGA)治療は左右差解消に最適な医療です
40歳代50歳代の人は、無理が利く年代です。しかしながら、内臓疾患や膝・腰などの関節に痛みが出る年代でもあります。働き盛りの人に、鍼灸治療は強い味方です。鍼灸治療は身体の外側から内臓機能に働きかけることが可能な「内外科治療」です。薬物治療(内科治療)で効果を得られない人や外科手術(外科治療)をしても痛みが消失しない人は、是非鍼灸治療(内外科治療)をお試し戴きたく思います。鍼灸治療で体の調和を取り、元気な40歳代50歳代をお過ごし戴きたく思います。鍼灸治療をご希望の人は、お近くの鍼灸院または鍼灸師が勤務している医療提供施設にご相談ください。
筋力低下防止・体力の維持向上に、ヨガ(YOGA)は最適です。ヨガ(YOGA)療法は、その人にあったカリキュラムを作成して行いますので、筋力や内臓機能が低下している人に最適です。筋肉の左右差は、骨格のゆがみから生じることもありますが、先天的にゆがみがある人や事故や病気などによって、ゆがみを直すことができない人もいます。
ヨガ(YOGA)のアーサナ(ポーズ)は、その人の体に合った全身のバランス調整が出来ますので、左右差の解消や病気回復にうってつけの健康法です。ご希望の人は、清野メディカルヨーガ/清野ヨーガ道場もしくはお近くのヨガ教室にご相談戴きたく思います。
日常生活の養生法について詳しくお知りになりたい人は、清野鍼灸整骨院ホームページ「くらしと養生」をご参照戴きたく思います。清野が呼称する養正(ようせい)治療は、日常の適正な生活です。
<筆者略歴>
清野 充典:鍼灸師
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