路面電車・とさでんに乗って後免東町駅に移動する。やなせたかしが幼少期を過ごした後免町は高知の中心地と違い、静かな住宅街といった雰囲気。昔ながらの商店街にはシャッターも目立つが、気になる店も点在している。この辺りの居酒屋でも特に名高い「酒処 さかえ」の小上がりで、おいしいおつまみをいただきつつゆったりと飲む。ここも手作りのお総菜がおいしい店なのだが、われわれ取材クルーの3人はみな年齢も近く、「こういうつまみで飲むのが一番ですよね」と、みんな趣味が合った。
2日目、早朝にJR高知駅からJR須崎駅まで移動。須崎は高知市から西へ35キロほどの距離にある街。漁業がさかんで、魚市場では毎朝、競りが行われているという。その様子を見学させてもらうために早起きをした。
須崎魚市場は一般の見学を常に受け入れていて、市場の方もそれに慣れている様子だった。とはいえ、市場のみなさんがテキパキと作業をされているところにお邪魔するのはなかなか気が引ける。邪魔にならぬよう、でもできるだけ間近で市場の仕事を見ようと思い、少し緊張しながら1時間ほどを過ごした。水揚げされたばかりの魚介類をこれでもかとたくさん見る。この辺りの海は、黒潮の暖流のおかげで、南洋の魚も生息できる。穏やかな湾があり、沖に出て漁をする人もいるから、魚種が豊富なのだと教えていただいた。
製紙業で栄えた旧三浦邸の建物を利用した市民ギャラリー「すさきまちかどギャラリー」にて館長の川鍋達さんのお話を伺う。川鍋さんがキュレーターの一人を務める展覧会「現代地方譚」は県外の作家を須崎に招き、滞在して制作してもらうアーティスト・イン・レジデンスで、個人的にも好きな寺尾紗穂さんやVIDEOTAPEMUSICさんが過去に参加しており、その成果をまとめた冊子が配布されていた。10年以上続いてきたそうで、冊子をたくさんもらってうれしい重みに。
近くにある「錦湯」という、廃業してしまった銭湯の跡地も展覧会場として利用されることがあるそうで、現在は展示期間中ではないが特別に中を見せていただいた。
川鍋さんの案内で近所を少し散策。「谷岡食堂」という古い食堂の前を通り、絶対に寄っていきたいと思う。最近は臨時休業の日も多いが、今日は営業するようで、川鍋さんと別れた後、行ってみることに。
名物だという鯖寿司(さばずし)がラスト1パックだけ残っていた。それをもらい、中華そばも食べる。鯖寿司も中華そばも、鳥肌が立つおいしさ。今日ここに来ることができたことを、いつまでも忘れないでいたい。