落語以外のお仕事もたまーにさせていただく。この前は、舞踊劇に出演させてもらった。名古屋の日本舞踊・西川流の皆さまの舞台だが、今年のテーマは「落語」。
そこで、佃煮(つくだに)にするほどいる落語家の中から、なんと私にお声がけくださったのだ。とてもありがたい。まずは落語の演目選びからだ。
いろいろ聴いていただいたが、「元禄女太陽伝(げんろくじょたいようでん)」という忠臣蔵の噺(はなし)に決まった。これは、私の師匠である春風亭小朝から習った落語で、主人公がおくまちゃんという、ちょっとおへちゃな女の子。古典落語ではおかみさんやお妾(めかけ)さんが出てくることはあるが、女性が主人公の噺はなかなかない。
なので、女性の私にもやりやすいだろうということで、教えてもらった大切な噺だ。私が落語を口演したあとに、この噺の後日譚(たん)として、おくまちゃんと恋仲になる大石主税(ちから)のその後を舞踊劇で描いてくださることになった。すごい!
おくまちゃんを4世家元・西川千雅さん。大石主税をフィギュアスケーターの高橋大輔さん。そして、声優の梶裕貴さんが声の出演をし、演出は堤幸彦監督。なんじゃこりゃ・・・。ゲストメンバーが豪華すぎて、恐れおののく。
しかし、私の落語を聴いてもらったあとに、その人物たちが動き踊るなんて、なんと幸せなことか! 私は狂言回しとして、ストーリーテラーのような役割で出演。さらに西川流の皆さまと踊りまで踊らせていただき、さらにラストシーンでは観世音菩薩にまでしていただくという、とんでもない設定に震えた。

とにかく、主人公の2人がキュートだ。眉毛がつながっているおくまちゃんだが、家元が申し訳ないが似合いすぎている。大輔さんもピュア度マックスの10代にしか見えない。日本舞踊に初挑戦とのことだったが、家元と舞台をクルクルまわる姿は、さすがすぎる存在感だ。
そりゃ、そうだ、世界と戦ってきた方なんだから。なのに、お稽古場で気さくすぎて、どら焼きを食べながら談笑してくださる。ハタと我(われ)にかえり、自分がどこにいるのかわからなくなることもしばしば。
そんなすごい出演者の皆さまが、最後私の観音様の姿にひれ伏すのだから、なんとも役得役得。楽しすぎました。それでは、落語の世界に戻るといたしましょう。妙法蓮華経。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 42からの転載】
蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)/ 東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年3月、真打ちに昇進し高座名を「蝶花楼桃花」と改める。昇進披露興行、初主任興行、企画にもかかわった全出演者女性による「桃組」はいずれも大入り。24年7月、31日連続ネタおろし独演会「桃花三十一夜」を池袋演芸場で開催、大成功をおさめる。









