カルチャー

バズり方の完全体、ILLIT 【山崎あみ コラム音楽の森】

 NHK紅白歌合戦に、一昨年から2年連続で出場した韓国人3人と日本人2人の5人組アイドルグループ、ILLIT(アイリット)。2024年に楽曲「Magnetic」でデビューすると、韓国の音楽番組で12冠を達成するなど、驚異的な記録をたたき出しました。

 ILLITの楽曲は「SNSでのバズり方の完全体」と言っても過言ではないプロデュースがなされています。彼女たちが見せるパフォーマンスの難易度は高いのですが、サビの振り付けは、まねがしやすくなっていますし、外国語でも1度聴けば覚えてしまうイントネーションの言葉が並べられています。

 楽曲をリリースすると、ILLITは振り付け以外にも「どんな撮り方をするとかわいいか」のお手本を公式SNSにアップします。ファンらが考案した撮り方もすぐに取り入れ、拡散します。バズった楽曲を動画に使うとSNSで拡散されやすいので、他事務所の有名アイドルもその音源を使う。この繰り返しが爆発的に再生回数を増やし、ショート動画の音源ランキングで毎回上位にランクインするのです。

 楽曲のテイストは、かわいらしい電子音が組み込まれているなど、お人形さんがおもちゃ箱から出てきて踊っているようで、夢の中的世界観です。振り付けもティーンの女の子のかわいさを引き出すスタイルが多いです。

 ILLITが誕生したきっかけは、韓国のオーディション番組「R U Next?」です。視聴者を驚かせたのは、参加者たちの圧倒的な完成度でした。既に〝1人のアーティスト〟として応援してしまうほど、自身の魅力を最大限に生かせる人ばかり。ヒップホップ、王道アイドル曲、ボーイズグループの楽曲、バラードまで、完璧にこなすラスボス同士の戦いにしびれました。その熾烈(しれつ)なサバイバルを勝ち抜いた5人がILLITなのです。

 オーディション当時は、メンバーのイロハはヒップホップが得意な「ダンスの神童」と呼ばれ、ユナは女性の強さが引き立つ、いわゆる「ガールクラッシュ」なパフォーマンスを得意としていました。ですから、デビューすると、グループコンセプトの「カワイイ」と、本人たちのイメージとのギャップに戸惑う声も見られました。でも、公式SNSやテレビ番組で、今もパワフルなダンススキルを目にすることができます。「カワイイ」を前面に押し出すことで、本人たちの元々のスキルは「意外性」となり、ファンをとりこにする要素になるのです。グループ名は「I will」と「It」を結合したもので、何でもできて何にでもなれる、潜在力と期待感が込められています。今後、楽曲のはやりが変わる時が来ても、何にでもなれるILLITを目撃するのが楽しみです。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.3からの転載】

山崎あみ(やまざき・あみ)/ 1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。タレント・モデル。1st写真集「Cantabile」(ワニブックス)の他、デジタル写真集も発売中。YouTube番組「うるおうリコメンド」(略称うるりこ。共同通信社制作)出演。