司馬遼太郎氏ではないが、今回は「閑話休題」。
週刊誌には「死ぬまでセックス」とか「60代からのセックス」とかいったHow to sexものの記事があふれている。床上手ならぬ床下手な私なぞにとってはまさに性書、おっとバイブルなのだが、ここではセックスではなくてビートルズについてのハウ・トゥを書く。
「セックス」で検索した人にはごめんなさい。同志よ!
ビートルズを初めて聴いてみたい人は、どのベスト盤から入っていいのか迷うことだろう。そこで浅学非才であり、多くの先達方を差し置いて恐縮だが、ちょっとした入門編を書いていきたいと思う。参考になればうれしく思います。
まずお薦めしたいのは『ザ・ビートルズ1』という英米でナンバーワンになった曲ばかりを集めたベスト盤である。デビュー曲「ラヴ・ミー・ドゥ」から70年のシングル「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」まで全27曲を収めたお買い得盤である。
ただし弱点もある。それは英国でビートルズ旋風が巻き起こるきっかけとなった大ヒット曲「プリーズ・プリーズ・ミー」とジョン・レノンのサイケデリック時代の傑作「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が収録されていないことだ。その2曲さえ入っていれば本当にベスト・オブ・ベストなのだが。
そのベスト盤より先に進みたい人にはCD2枚組のベスト盤2セット―『ザ・ビートルズ 1962~1966』(26曲入り)と『ザ・ビートルズ 1967~1970』(28曲入り)を手にすることをお勧めする。ジャケットの色からそれぞれ赤盤、青盤として知られるベストである。
そこをクリアした人はもうビートルズのオリジナル・アルバム14作品を、どういう順番でもいいけれど、聴いていくことを勧めたい。彼らが現役時代に残した全213曲(217テイク)をじっくりと味わってもらいたいと思う。
そこまでいったら初めて、未発表音源などをまとめたアンソロジー・シリーズ、ラジオ放送のためのライブ音源を収録したBBCライブなどに入っていくと良いだろう。
ビートルたちの人生は70年の解散以降の方が長い。ソロ作品を味わいたい人もどこから聴いていいか迷うかもしれないが、やはりベスト盤から入るのがいいと思う。
まずはジョン・レノン。彼のベスト盤としては『パワー・トゥ・ザ・ピープル:ザ・ヒッツ』が買いだ。69年の「ギブ・ピース・ア・チャンス」(平和を我等に)から遺作となったアルバム『ダブル・ファンタジー』からのシングル3作品まで、彼のソロ・キャリア時代の代表作15曲を網羅しているからだ。もちろん「イマジン」も収録されている。
ポール・マッカートニーの代表曲を楽しみたいなら、CD2枚組の『夢の翼~ヒッツ&ヒストリー』がお薦めだ。ディスク1にはシングルヒットが18曲、ディスク2にはポールが気に入っている22曲が収められている。ただし、スティービー・ワンダーとのデュエット「エボニー・アンド・アイボリー」と、マイケル・ジャクソンとのコラボ「セイ・セイ・セイ」は収録されていないので要注意だ。
ジョージ・ハリスンのソロ代表作をカバーしたいなら『ジョージ・ハリスン~オールタイム・ベスト』が良い。「マイ・スウィート・ロード」、「ギブ・ミー・ラヴ」、「セット・オン・ユー」といった全米一位獲得曲を含む19曲が収録されている。ファンにとってうれしいのは彼のビートルズ時代を代表する3作品――「サムシング」、「ヒア・カムズ・ザ・サン」、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」が、“バングラデシュ難民救済コンサート”のライブ音源で入っていることだろう。
最後にリンゴ・スターのソロだが、彼には『フォトグラフ ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・リンゴ・スター』というベスト盤がある。70年から2005年までの代表作20曲を収録している。リンゴとジョージの共作「想い出のフォトグラフ」とポールが参加した「ユア・シックスティーン」という全米ナンバーワンヒットも聴ける。リンゴを中心に、他の3人のビートルたちとの交流が続いていたことが分かるところがファンにはうれしい。
ディスコグラフィーとしては諸先輩方の本がいくつかある。ここでは、『ザ・ビートルズ奇跡のサウンド 全活動・全作品パーフェクトガイド』(日経BP社)と『ザ・ビートルズ完全ガイド最新版』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、ソロ時代もカバーした労作である和久井光司氏の『ザ・ビートルズ・マテリアル』全四巻(ミュージック・マガジン)を挙げておきたい。
(文・桑原亘之介)
桑原亘之介
kuwabara.konosuke
1963年 東京都生まれ。ビートルズを初めて聴き、ファンになってから40年近くになる。時が経っても彼らの歌たちの輝きは衰えるどころか、ますます光を放ち、人生の大きな支えであり続けている。誤解を恐れずにいえば、私にとってビートルズとは「宗教」のようなものなのである。それは、幸せなときも、辛く涙したいときでも、いつでも心にあり、人生の道標であり、指針であり、心のよりどころであり、目標であり続けているからだ。
本コラムは、ビートルズそして4人のビートルたちが宗教や神や信仰や真理や愛などについてどうとらえていたのかを考え、そこから何かを学べないかというささやかな試みである。時にはニュースなビートルズ、エッチなビートルズ?もお届けしたい。