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大河ドラマでも注目の福地桃子、芝居の原動力は「たくさんの人やもの、役柄に出会える楽しさ」『あの娘は知らない』【インタビュー】

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 NHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」では夕見子役を、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では北条泰時の妻・初を演じ、脚光を浴びた福地桃子。梅酒のCMで5代目イメージキャラクターを務めるなど、その透明感あふれる声とたたずまいで注目を集めている。その福地が、新進気鋭の若手監督・井樫彩監督とタッグを組んだ映画『あの娘は知らない』が、9月23日から公開される。福地に作品への思いや撮影の裏話などを聞いた。

福地桃子(ヘアメーク:曳田萌恵/スタイリスト:武久真理江) (C)エンタメOVO

-本作は、海辺の街を舞台に、旅館を営む若い女性・奈々と恋人を亡くした俊太郎の出会いと再生を描いていますが、最初に脚本を読んだときは、どんなことを感じましたか。

 時の流れはゆっくりだけれど、2人の心の動きがすごくたくさんあるなと思いました。私が演じさせてもらう奈々の言動は、違和感なく理解することができましたし、俊太郎との距離感や関係性も心地よく感じました。

-岡山天音さんが演じた俊太郎との距離感は、この作品のキーでもありますね。非常に不思議で、でもすてきな関係性でした。

 性別の違う2人が過ごす中で作られていく、居心地のいい空気は2人にしか作れないものだと思いますし、2人にとっては、それがすごく自然に思えたんだと思います。演じているときは、どうしてこういうことをしたのかとか、理由を考えていたわけではなく、私自身も俊太郎さんとの時間を、何だと聞かれても分かりませんが、でもすごく居心地がよかったんだろうなと思っていました。

-幼い頃に家族を亡くし、一人で旅館を営んでいる奈々は、さまざまなものを抱えて生きています。そうした奈々を演じるのは難しかったのではないかと思いますが、演じる上ではどんなところを意識していましたか。

 撮影に入る前は、奈々が抱えているものをどう表現するのか、その抱えているものの大きさをどう理解したらいいんだろうか悩んでいましたが、実際に撮影場所となった伊東に行ってみたら、そこには奈々の当たり前がたくさんあることに気付き、考えるのをやめました。きっと奈々は、その抱えているものすら体になじんでいるんだろうなと思いましたし、そこまで特別なことではないのかもしれないとも感じました。それまでは、考えて見付けようとしていたから、体がすごく重かったんです。この体の状態は奈々ではないと思って、一人で立ち止まってしまったときに、監督が「自分の中から出てきたものを大事にしてほしい」と声を掛けてくださって。その言葉で、自分をもっと信じてお芝居をしたいと思うようになり、体がスッと軽くなったような気がします。

-なるほど。

 それから、俊太郎さんとのシーンがほとんどなので、2人で過ごす時間が多かったからこそ、その会話の中で生まれる喜びや、気持ちが豊かになっていくのを感じ、自分だけでは出会えなかった奈々の感情をどんどん引き出してもらった感覚がありました。なので、現場に入ってから、どんどん奈々が自分の体になじんでいくのを感じましたし、その感覚を大事にして演じました。

-俊太郎役の岡山さんの印象を教えてください。

 俊太郎と奈々の関係性と同じように、一緒に過ごしていてとても心地がいい、安心感をいただける方でした。一緒にお芝居をさせていただくことで、毎日発見があり、自分の予想もしないところで奈々というキャラクターをつかむヒントを頂いていたなと思います。

-撮影で特に印象に残っているシーンは?

 奈々が俊太郎さんにご飯を出すシーンが何度かあるのですが、私は最初にご飯を食べてもらうシーンが好きです。すごく地味なことなのですが、何度も(映画を)見ていただけたら好きになるようなポイントかもしれません(笑)。私自身も、撮影で印象に残ったというよりは、映像を見た時に目に留まったシーンがそこでした。2人のやりとりが温かく、自然で、食卓の温もりを感じられて、奈々にとってはすごく必要な時間だったのかもしれないと思いました。改めて、そうしたささいな時間を大事にしたいと思わせてくれるシーンだと思いました。

-では、本作に限らず、福地さんが芝居をする上で、これだけは大切にしたいと思っていることはありますか。

 自分がやらせていただく意味を大事にしたいです。きっと誰でもよかったわけじゃないと思うんです。そうすると、何で自分だったんだろうという思いがよぎるんです。改めて、振り返ったときに、自分でも私がこの役をやってよかったと思えるぐらい、役と向き合えたらいいなと思いますし、その思いは大事にしたいですね。