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大竹しのぶ、演じるモチベーションは「たまたま私が演じるチャンスをもらえた。それは感謝しかない」という思い 舞台「ヴィクトリア」で21年ぶりの一人芝居【インタビュー】

-大竹さんの芝居を見ていると、まるでその役が乗り移ったかのような瞬間を感じるのですが、こうして話を聞いていると、緻密な計算に基づいて芝居をしているのかなとも感じます。大竹さん自身は、自分のお芝居をどう分析していますか。

 計算というのとも、ひょう依するというのも違うかな。必ず冷静な自分がいます。稽古でその作品の到達点というのは分かっているので、そこに向けて幕が開いた瞬間にその役として声を出して、動作する。それがお芝居なので、「今日はこうやろう」というのはあまりないです。ただ、それでも毎日違いますし、違うから楽しいというのもあります。

-そうすると、その到達点が見つかるまでの稽古の過程というのは、かなりの苦労もあるんですね。

 そうですね、積み上げていく作業ですので、稽古が一番大変。だから面白いんですが。今回は一人芝居ですし、休む時間もない。でも、だからこそ作り上げやすいとも思います。自分と藤田くんが頑張ればいいので(笑)。演劇ってこんなに面白いものなんだと思っていただけるような作品にしたいです。何か一つでも心に残る言葉を持って帰っていただけたらと思います。

-5月まで上演していた「GYPSY」や本作での一人芝居など、エネルギーを使う作品が続いていますが、そうした作品に挑むモチベーションはどこから生まれているのですか。

 だって、こんなすてきな役をもらえるんですよ? もしかしたら誰かが演じた方がよかったのかもしれないけれど、たまたま私が演じるチャンスをもらえた。それは感謝しかないし、精いっぱい頑張るしかないと思って、毎日、作品に挑んでいます。ほかの作品もそうですが、こうして演じさせていただけるのは、とても幸せなことですから。

 私が若いときに、宇野重吉さん(演出の)の作品に出演したことがあったんです。私はテレビと掛け持ちをしていたので、時々代役の人がしてくれていたのですが、ある時、稽古場に行ったら、宇野さんから「座ってろ」と言われて、その代役の人のお芝居を見させられたことがありました。その方のお芝居がとてもすてきで…この人がやった方がいいのかもしれないとか、でもここは私の方が表現できているとか、とても複雑な気持ちになりました。そのときに、どの作品もどの役も、たまたま私にきたんだと思うことが大事なんだと教えていただいたように思います。なので、どの役にも感謝して、今の自分にできる精いっぱいをやるということを常に意識しなくてはいけないと思っています。

(取材・文・写真/嶋田真己)

舞台「ヴィクトリア」

 舞台「ヴィクトリア」は、6月24日~30日に、都内・スパイラルホールほか、7月5・6日に兵庫、7月8・9日に京都、7月11日に豊橋で上演。 公式サイト