-山田さんは凛について「私が凛に感じたのは、諦めの精神みたいなものです。最初からどん底にいるから、そもそも⼈間に期待をしていない。その感覚は現代の若い世代にもつながる気がします」と語っていますね。その言葉に込めた思いを聞かせてください。
最近、「“さとり世代(堅実で高望みをしない現代の若者を指す言葉)”ですね」と言われて、「そういうことなのか」と納得したんです。以前、仕事関係の50代の方から「野望は?」と聞かれたことがあるんですけど、「ハリウッド映画に出たい!」みたいな野心とか、アメリカンドリーム的なものを持ったことがないんです。だから、そういう世代なのかもしれないなと。言い換えれば、現実的な考えの人が多い世代なのかもしれません。ただ、大きな夢を持つのはすてきなことですけど、持ってなくちゃいけないのかなとも思うんです。私はこの仕事が楽しいので、楽しく仕事をして、生活できている今が十分幸せです。ホンが面白い作品と、すてきな方たちが一緒の現場に参加させてもらえたら、それだけで割と満足なんです。
-さらに、「何かを諦めているからこその強さもあると思うんです」とも語っていますね。
それは「今より下に落ちることはないから」みたいな感じですね。多分、安定志向なんだと思います。凛の場合はそれがすごく極端で、「これ以上悪いことはないから、どうでもいい」という気持ちが強さの裏にあるのかなと。そういう意味では、凛は同じ環境にい過ぎて、そこから逃げるという選択肢がなくなってしまった感じがすごくするんです。今なら、そういう人たちにもシェルターのような避難場所がありますよね。凛もそういう立場の人だったんじゃないでしょうか。
-そういう意味では、同世代の方にこの映画を見てもらいたいという思いはありますか。
私たちの世代が見たらどう思うんでしょうね…。気になります。ご覧になった方の感想をぜひ聞いてみたいです。
-ところで、福永壮志監督が、山田さんを凛役に起用した理由の一つとして「どこか野⽣的で、山でも生きていけそうだから」と語っていますが、ご自身ではどう思いますか。
山でも生きていける人でありたいですし、精神的にも耐えられると思います。ただ、火を起こしたりするサバイバルテクニックがないので、実際は無理な気がします(笑)。
(取材・文・写真/井上健一)