ー本作は、サナトリウムを舞台に死生観が描かれていますが、そうした死生観に触れて今、草なぎさんはどんなことを感じていますか。
皆さん今、コロナを乗り切ったという同じ経験を持っていますが、そうしたことも舞台上で思い出して、リアルな気持ちが湧いてくるんですよ。もしかしたら、また恐ろしいことが起こるということもあるのかなと、ハッとするような脚本だと思います。もちろん、この作品自体はフィクションですが、その中にも胸がザワザワしてしまうシチュエーションがあって、例えば、サナトリウムで結核になられた方が肩を寄せ合いながら畑仕事をするという姿も現実にあるのかなと思ってしまうと、より役に入り込めます。
今、僕たちが普通にクリスマスや年末年始を過ごせるというのは、改めて考えると素晴らしいことですよね。ただ、裏を返せば死は誰にでも平等にあるもので、いつ訪れるか分からないものでもある。そう考えると、日常の中の幸せやちょっとしたことがかけがえのない時間なんだなということを、今一度、僕に教えてくれているように思います。
ー草なぎさんが演じる鐘谷志羅という人物についてはどう考えていますか。
演出の寺十吾さんから「志羅は人の話を引き出すような何かの力がないといけない」と言われていたので、どこかはかなげで、浮世離れしているところがあるのではないかと思い、そう演じたいと思っています。自分の死に対しても客観視していて、不思議な雰囲気がある。実際に、なぜかこの人には話しやすい人っていると思うんですよ。そういうイメージで演じています。
ー稽古場はどんな雰囲気でしたか。
皆さんチームワークが良くて、真面目で優しくて、なんでこんなに嫌な人がいないんだろうと思うカンパニーでした(笑)。僕は恵まれていて、周りに嫌な人がいないんですよ。一人くらい嫌な人がいた方が面白くなるのにと思うくらい、いい人ばかり。(今回のカンパニーのメンバーは)だしやリンゴや食べ物をいろいろくださるんです(笑)。だから、稽古していると食料に困らないんです(笑)。ずっとこの舞台をやっていたいな。
ー2024年はこの作品からのスタートになると思いますが、どんな1年にしたいですか。
2023年はたくさんの役を演じることができて、幸せ満開の春がきたという感じでした。舞台も映画もドラマも、演じるということに関しては全て網羅できてしまったので、すごく幸せでした。良いものをたくさんみんなから受けて、拾わせていただいたので、2024年も焦らず、コツコツと進んでいけたらと思います。2023年に受けた良いものを自分の中で開花させる1年になればと思うので、頑張ります。