エンタメ

ウエンツ瑛士「お芝居の力をまざまざと見せつけられている」 現代社会に問いかける物語「オーランド」で届ける演劇の魅力【インタビュー】

 ウエンツ瑛士が出演するPARCO PRODUCE 2024「オーランド」が6月29日から上演される。本作は、20世紀モダニズム文学の重鎮として有名な女流作家、ヴァージニア・ウルフの代表作『オーランド』を舞台化した作品で、青年貴族から女性へ変貌し、16世紀から20世紀を超えて生き続けたオーランドが1人の人間として自立していく様子を描く。ウエンツに本作への意気込みや稽古の様子などを聞いた。

ウエンツ瑛士 (C)エンタメOVO

-現在(取材当時)、お稽古も終盤を迎えています。今回は、複数の役を演じられるということですが、お稽古の感触はいかがですか。

 複数の役を演じるということよりは、この舞台にどのように存在すればいいのかという難しさと常に戦っています。

-そこが今、お稽古の中で一番意識されているところですか。

 そうですね。複数の役を演じていますが、一つ一つのシーンがすごく短いこともあるので、その瞬間にそれがどんな人物かをお客さまに伝えなくてはいけないですから。とはいえ、伝えるためだけにそこにいるわけではなく、ただそこに存在していなければならない。その両方を達成の仕方を考えているところです。

-この作品の脚本を最初に読んだときの率直な感想は?

 難しいなと思いました。リアルな会話劇とは遠い世界だったので、これをどう(演出の)栗山(民也)さんが表現なさるんだろうっていうところにすごく興味もありました。

-宮沢りえさん、河内大和さん、谷田歩さん、山崎一さんと実力派のキャストがそろっています。そうしたキャストの皆さんとのお稽古ではどんなことを感じていますか。

 稽古なので当然、いろいろなことをこなして覚えて、新しいものをどんどん生み出していくという作業を行っていますが、皆さん、すごく演劇が好きで、大変な作品ではあるけれども楽しんで前に進んでいることを感じます。すごく前向きな方ばかりです。なので、稽古場に行くのがすごく楽しいです。

-紅一点の宮沢さんの印象はいかがですか。

 今、言われて、そういえば紅一点だなと思ったくらい、役者仲間としてそこに存在してくださっています。その立ち姿は、いつもエネルギーがあふれていて、稽古場の空気を作ってくれているのを感じます。役というのは、演じる人の人格が反映されるものだと思います。りえさんを筆頭に、毎日充実して人生と向き合っている人たちからにじみ出るお芝居の力をまざまざと見せつけられている稽古場です。

-そうしたお芝居の力というのは、もちろんウエンツさんにも共通する力だと思いますが、お芝居のためにウエンツさんが心がけていることはありますか。

 僕は楽しんでチャレンジすることだなと思います。今回、栗山さんとご一緒するのも初めてで、自分がこの舞台でどういうことができるんだろうとか、自分ができる表現は何だろうと探っているところがあります。だからこそ、積極的にチャレンジをしていきたい。栗山さんに見ていただける機会が初めてで、しかも稽古中のこの1カ月しかない。なので、とにかく何でもやりたいですし、例えば「こっちだ」と言われたら、その方向の最上級にまずはいきたいんですよ。それができるのは、栗山さんへのリスペクトと愛情、りえさんをはじめとした皆さんへの信頼感があるからこそだと思います。

栗山さんの演出で特に印象に残っていることを教えてください。

 たくさんあります。台本には驚かれるくらいの文字が書いてあるくらいですから。ただ、やはり1番に感じているのは、今回の稽古場で僕がなんで演劇を好きになったのかを思い出させてくれたなということです。やっぱり演劇が好きだなと思いました。