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市原隼人、「物事の根源」を見つめ続けることが人生の信条 「涙が止まらなかった」10代後半の出来事を明かす【インタビュー】

市原隼人【スタイリスト:小野和美、ヘアメーク:大森裕行、福間友香(ともにVANITÉS)】(C)エンタメOVO

-本作ではハラハラドキドキの展開が繰り広げられますが、最近市原さんがハラハラドキドキしたことを教えてください。

 僕は料理をするのが好きで、友達が家に来る機会があると朝築地に仕入れに行って料理を振る舞うのですが、先日友達が来る日が台風の影響で漁師さんが漁に出られないのではないか、もしかしたら欲しい食材がなくて友達を喜ばせることができないのではないかと思ったときにハラハラドキドキしました(笑)。結局2日連続で築地に通って、狙っていたハマグリや伊勢エビ、アジなどの海鮮系の食材を無事に調達することができました。その日友達に作ったのは、いつものコースなのですが、なめろうにハマグリのお吸い物、刺身、焼き魚、常備菜などの和食です。家に来てもらった方に生きた食材を一緒にさばいて楽しんでいただくということをいつもやっています。

-今回の役柄を演じられる際に、市原さんは「田胡悠人は彼にしかない基準、ボーダーラインで動く男」「何かをやらなければならないという使命感に突き動かされて生きている」とコメントされていましたが、市原さん自身の“人生の基準”や“使命感に突き動かされること”があれば教えてください。

 物事の根源を見つめ続けていきたいという気持ちを大事にしています。それは俳優という仕事に向き合うことに対しても同じです。何のために役者を務め、何のために1つ1つの現場があり、さまざまな作品と向き合っているのかという根源と向き合う気持ちをおろそかにしないという単純でシンプルなところが人生の基準になっています。

-それは市原さんが俳優業を長く続けているうえでたどり着いた境地なのでしょうか。

 実は僕は元々前に出ることが苦手なので、最初は人前に立つ芝居なんてしたくないという思いだったのですが、10代後半の頃に作品を見てくださった方から「余命3カ月だけども病室で市原さんの作品を見ると笑顔になれるんです」とか「今日、目の手術をするのですが、もしかしたらもう目が見えなくなってしまうかもしれないので、最後にこの作品を見る事しました」とか「学校に行けなかった息子が作品を見て行けるようになったんです」といったお客さまの声を聞く機会がありました。自分の命の最後でも作品を選んでくださる方や、それほど楽しみにしてくださっている方がいる。真摯(しんし)に作品と向き合ってくださるお客さまの声を聞いて涙が止まらなくなりました。

 そのために役者という仕事やドラマ、映画、舞台、エンターテインメント作品があるのだと感じさせていただいてから、自分が変わっていったと思います。若い頃は人のせいにして頼ってばかりいたのですが、その愚かさに気付き、ただお金を稼ぐために仕事に来て帰ると繰り返してる人間では何も生まれない、自分の職業やその職業を支えて下さる全ての方々にしっかりと敬意を払い、後世にも何か大切なものを残すべく本質を求め現場で奮闘しなくてはならないと思うようになりました。自分の欲よりも、お客さまにお楽しみいただくために、われわれが作品を作っているという、その根源を忘れないでいる努力をするようになりました。

-情報社会の中で「物事の根源」や「本質」と向き合うことは難しいと思う人もいるのかなと思います。余計なものをそぎ落として、それらと向き合うために市原さんがやっていることはありますか。

 純粋にお客さまに楽しんでいただくために何をするべきかという1つ1つの「作品の意義」を見つめ続けることです。何のために作品を作って、何を感じていただきたいか、自分は何のために現場にいるのかということを認識しながら行うこと。よそ見をすることは簡単です。もっと楽に仕事をしたいなとか、もっと自分が楽しんでやりたいなとか。ですが、そうするとどんどん秩序が崩れていくので、泥臭くても自分の目の前にある何かにしがみつき、結果的にそれがお客さまに少しでも楽しんでいただくスパイスになったらいいなと思います。

ドラマは10月6日(日)深夜1時50分~テレ東で放送スタート(毎週日曜深夜1時50分放送)。地上波放送1週間前の9月29日(日)夜8時からTVerで先行配信中。

(取材・写真・文/小宮山あきの)