エンタメ

高橋克典、還暦を目前に「変わらないものを持ち続けていきたい」 舞台「応天の門」では新たなハマリ役・在原業平に挑む【インタビュー】

(取材当時)これからお稽古が始まりますが、お稽古に向けて楽しみにしていることを教えてください。

 今回の作品は、オムニバスなんですよ。いくつかの話から1作が出来上がっているという作品なので、僕にとっては初めての挑戦です。どうなるのだろうと、本当にやってみないと分からないというのが正直なところです。ただ、きっと(演出の)青木(豪)さんが飽きさせない芝居にしてくれるのだと期待しています。そして、難解なせりふを掘り下げて作り上げるというよりは、非常に分かりやすく簡潔な展開で書かれていることもありますが、エンターテインメント性の高い舞台になるのだろうなと感じてます。なので、間口が広い、いろいろな方に楽しんで見ていただける作品になるのではと思います。大河ドラマを見て、平安時代に興味を持った方にもぜひ来ていただきたいですね。原作ファンの方はもちろん、さまざまな世代の方にも来ていただきたいと思います。

-ところで、公演中の12月15日には、還暦を迎えられます。そうした意味でも、今年は節目の年になりますね。還暦を迎えることで心境に変化はありますか。

 若い頃には意外と戻れるものですが、歳を重ねないと分からない気持ちもあるので、役の幅が広がっていることは感じています。家族を持ったり、子どもが生まれたり、歳を取ったりしたことで、人生の終わりについて考えることも増えてきました。40代までは「人生の終わり」なんて、全く考えたことがなかったんですよ。50代になって、なんとなく先も視界に入ってくる。そして今、「還暦」と周りから言われて、少しうるさいなと思いながらも(笑)、変わらないところは自分の中で持ち続けて、良質に熟していけたらと思います。

-歳を重ねることは楽しいですか。

 そうですね。いいことだと思いますよ。もちろん、楽しさと寂しさといろいろな思いがありますが。そうした気持ちの全てを俳優として演技に使っていけるので、俳優とは面白い職業だなと思います。

-今後の目標は?

 皆さんに楽しんでいただけるように、目の前の題材にまい進することです。以前は大きな目標に向かってガムシャラに走っていくという時期もありましたが、今は俳優として心を育てながら、人生の悔いが残らないように、自分にある可能性やできることをやっていけたらと思っています。

-最近は、チェロの演奏もされているとお聞きしましたが、音楽にも積極的に取り組んでいるのですか。

 後輩の高嶋ちさ子さんが誘ってくれて、「ザワつく!音楽会」という公演に出演させていただいています。チェロを始めて3年目になりますが、楽しんでやらせていただいていますよ。最近は、クラシックのコンサートの司会をやらせていただいたり、外国人の方を招いてお話を聞く番組のMCをやらせていただいたり。自分ができることで、面白いと思うことは、いろいろと挑戦していこうと思っています。

-改めて公演に向けての意気込みと読者へのメッセージをお願いします。

 平安時代を描いた作品はあまりないと思いますので、ぜひこのムードの中に一緒に飛び込んで楽しんでいただけたらと思います。お話の中には物の怪(もののけ)が出てきたりと、皆さんが楽しんでいただけるストーリーになっています。(本作が上演される)明治座は、お芝居だけでなく、ご飯を楽しんだり、お土産を買ったりしながら、みんなで楽しい時間を過ごせる場所です。ぜひそんな楽しい時間を過ごしていただけたらと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

舞台「応天の門」

 舞台「応天の門」は、12月4日~22日に都内・明治座で上演。