
-そのかいあって、悪役として見事な存在感を発揮していました。
ただ、途中から「いいよ」と褒められることが怖くなってきました。褒められるということは、自分の中にもスガンのような凶悪な部分があるのかも…と思え、それにどんどん慣れていく自分が怖いなと。
-そういう強烈な悪役を演じる上では、心のケアも必要だったのでは?
そうなんです。だから、毎日帰宅するたび、バラードのようなスローテンポの音楽を聴きながら30分くらい瞑想(めいそう)し、心のバランスを保っていました。
-これまでも「マスクガール」(23)などで悪役を演じてきましたが、繰り返し悪役を演じる難しさもあったのではありませんか。
元々は、善良な役と悪役を交互に演じるつもりだったんです。でも、コロナ禍の影響でスケジュールがずれ込み、たまたま悪役が続いてしまって。「どうしよう」と思いましたが、作品をご覧になった皆さんが、一口に「悪役」といってもそれぞれのお芝居の微妙な違いに気付いてくださり、幅広い役を演じられると認めていただける機会になりました。そういう意味で、結果的には僕にとってプラスに作用しました。
-なるほど。
ただ、スガンのような役は精神的にも肉体的にも大変なので、悪役はそろそろ控えたいところです(笑)。街中で、他の方がかっこいい役で気付いてもらえるようなときも、僕の場合、「あの悪役をやった人だ!」と言われてしまうんです。しかも、僕は悪役を何度もやっているので、そこで「どの役かな?」と考えてしまって(笑)。僕も決して悪い人間ではないので、そろそろ「いい人」と思われたいですね。
-お話を伺っていると、役と正反対の優しいお人柄が伝わってきて、悪役を演じるお芝居のすごさがよくわかります。劇中では敵対するソ・シミン役のシン・ヘソンさんとも、現場では仲良くされていたそうですね。
そうですね。ヘソンさんは人柄も魅力的で、いつも「ジュニョン、お疲れ」と声を掛けてくださるんです。かっこいいお姉さんのような方でした。ただ、力が強く、僕が顔をひっぱたかれるシーンは、ものすごく痛かったです。そのとき、シミンは猫のマスクを着けていたので、「男性の代役の方かな?」と思っていたら、マスクを外すとやっぱりヘソンさんで(笑)。僕を気遣ってくださったので、その場では「大丈夫です」と答えましたが、実際はとても痛くて、思わず「何か悪いことしたかな?」と、自分の行いを振り返ってしまいました(笑)。
-ジュニョンさんが俳優として、この作品を通じて得た最も大きな収穫はなんでしょうか。
台本をより的確に読み取り、お芝居に必要な部分をきちんと把握できるようになりました。実は今回、準備のため、台本をいつもより多く、50回以上読んだんです。そうしたら、「この部分はこんなふうにも演じられるな」といった感じで、いろんなお芝居を探ることが楽しくなってきました。それは、僕にとってすごく大きな収穫でした。
(取材・文/井上健一)
