社会

子どもの自主性育む活動など表彰 第17回キッズデザイン賞

内閣総理大臣賞を受賞したこども選挙実行委員会代表の池田一彦さん(右)。左は同委員会全体監修の宮崎一徳さん=2023年9月27日、東京都港区の六本木ヒルズ
内閣総理大臣賞を受賞したこども選挙実行委員会代表の池田一彦さん(右)。左は同委員会全体監修の宮崎一徳さん=2023年9月27日、東京都港区の六本木ヒルズ

 子どもに関するあらゆる社会課題の解決に寄与する活動や製品、サービス、研究などを顕彰する「キッズデザイン賞」の第17回表彰式が9月27日、東京都内で開かれ、子どもを大切にする社会づくりに貢献する、内閣総理大臣賞ら各賞受賞者の優れた取り組みをたたえた。
 

 キッズデザイン賞は2007年創設され、17回目。今回は391点の応募の中から、最優秀の内閣総理大臣賞をはじめ優秀賞、奨励賞、特別賞の計37点を選び表彰した。子どもの自主性を育てる視点や誰一人取り残さない「社会的包摂」の観点、コロナ禍後の社会や子どもを取り巻く衛生意識の変化など、時代の変化を的確にとらえている取り組みを評価した。

 キッズデザイン賞を主催するキッズデザイン協議会の坂井和則会長は「社会的包摂の観点からの応募が増えた。子どもやその家族を孤立させない取り組みが拡大している。また子どもを守るだけでなく、子どもの自主性を育てる方向性も出てきた。今回の受賞は、いずれもキッズデザインの理念を示す素晴らしい取り組みばかりだ」とあいさつで述べた。

あいさつするキッズデザイン協議会の坂井和則会長
あいさつするキッズデザイン協議会の坂井和則会長

 各賞を選考した審査委員長の益田文和氏は講評の中で「われわれの未来とは子どもたちの未来のことだ。未来のことを考えることは、人間の子どもたちはもちろん、動物などありとあらゆる生き物の子どもたちを含めた地球全体の生態系を考えることである。そうでなければわれわれの未来、地球の未来はない」と子ども重視の必要性を指摘。今後のキッズデザイン賞の在り方にも言及し「17年間審査してきたが、社会の変化に応じて、応募内容も変わり、審査の在り方も変化している。これからは審査委員に子どもを加えたり、大人だけでなく子どもも参加できるにぎやかな表彰式に変えたりすることが望ましい」と述べた。

講評を述べる益田文和審査委員長
講評を述べる益田文和審査委員長

 最優秀の内閣総理大臣賞は2022年10月の神奈川県茅ヶ崎市長選(候補者3人)で、同市内の小学1年生から17歳までの男女が模擬投票する「こども選挙」を実施した「全国こども選挙実行委員会」(池田一彦・管理人)が受賞した。

 この「こども選挙」には、566人が参加し投票した。各候補者へのメッセージも募り、359人が要望などをつづった。15人の子どもが各候補者にインタビューをする「選挙委員」を務め、大人のボランティア約60人が市内11カ所に設けた投票所の設置やオンライン投票システムの構築など、各種選挙事務を担当した。子どもたちの投票による候補者の得票数の順位は、実際の選挙の順位と同じだったという。

賞状を受け取るこども選挙実行委員会代表の池田一彦さん(中央)ら
賞状を受け取るこども選挙実行委員会代表の池田一彦さん(中央)ら

 この「こども選挙」の実施を呼び掛けたのは、茅ヶ崎市の自営業池田一彦さん。2人の子どもを持つ池田さんは、子どもの自主性を育てるためには、身近な地域のことに関心を持ってもらうことが「一番の近道ではないか」と考え、知人らに協力を求めた。賞状を受け取った池田さんは「市民活動が受賞したことに驚いている。われわれの受賞をきっかけに、子どもたちが地域に関心を持ち、地域づくりに関わる取り組みが全国に広がってほしい。われわれは次期茅ヶ崎市長選でも子ども選挙を実施したい」と話した。

 社会的包摂推進の観点から「こども政策担当大臣賞」を受賞したのは、静岡県御殿場市に、発達障害児の療養や不登校児の支援、放課後児童クラブなどの機能を提供する「フジ虎ノ門こどもセンター」を開設した「社会医療法人青虎会」(土田博和会長)ら。発達障害の子どもたちの交流を促進するため、室内を移動しやすく間取りを工夫したり、庭に面した窓を大きくしたりするなど、保護者が子どもたちの姿を確認できる開放的な建物にした。

こども政策担当大臣賞を受賞した青虎会の土田博和会長(左)とフジ虎ノ門こどもセンター統括管理の林飛香さん(左から2人目)
こども政策担当大臣賞を受賞した青虎会の土田博和会長(左)とフジ虎ノ門こどもセンター統括管理の林飛香さん(左から2人目)

 こども政策担当大臣賞を受賞した青虎会の土田博和会長(左)とフジ虎ノ門こどもセンター統括管理の林飛香さん(左から2人目)

 フジ虎ノ門こどもセンターの周囲には、病院や老人ホームなどが隣接し、高齢者と子どもたちの交流も生まれている。同センター統括管理の林飛香さんは「地域の要望が強かった、発達障がいの子どもたちをきちんと診ることができるセンターをつくることができた。医療的な対応も万全で保護者の信頼も高い施設になった」と語る。

特別賞を受賞した積水ハウスの尾島篤さん
特別賞を受賞した積水ハウスの尾島篤さん

 コロナ禍への優れた対応で特別賞を受賞したのは積水ハウス(大阪市)。横浜市で分譲したマンション(総戸数45戸)の共用エントランスホールに感染対策の「手洗いコーナー」を設けた。蛇口などに手を触れることなく、お湯や手洗い用せっけん液が出る。設計した積水ハウス東京マンション事業部副設計長の尾島篤さんは「コロナの感染拡大を受け、設計に組み入れた。エレベーターや部屋のドアの開閉はすべて手で触れるので、エントランスで手を洗う仕組みは、感染対策上、効果があると考えた」と手洗いコーナー設置の狙いを説明する。共用エントランスホールに設置したので、顔を会わすことが少ないマンション住民同士の交流促進にも期待を寄せている。