時間外労働の上限規制が行われる運輸業や建設業の人手不足が深刻化する「2024年問題」を持ち出すまでもなく、世の中、慢性的な人手不足に陥っている企業、業種が少なくない。そこで、帝国データバンク(東京)では、人手不足倒産の動向を分析した。
足元の人手不足割合は、既にコロナ禍前と同水準まで上昇し、高止まりが続いているという。その結果、この10月の人手不足倒産の件数は29件となり、年間累計で206件に達した。10月時点で年間ベースの過去最多を更新するなど、事態は深刻化している。特に建設業と物流業の合計は109件だった。この2業種だけで全業種の過半数を占めており、既に「2024年問題」が顕在化している状況。業歴別でみると「30年以上」が84件で最も多くなり、従業員数別では大半が「10人未満」の小規模事業者だった。規模が小さい企業ほど、1人欠けると他に働く人の負担の度合が大きくなる。中小企業にとって、人手不足を解消するために種々の工夫を行うことが重要といえそうだ。
そうした中で、足元では物価高などによって各種コストが高騰、人件費に割ける余力が残されていない様子だ。「仕事はあるが慢性的な人手不足のため受注することにちゅうちょしている」(一般管工事、長野県)との声もあるなど、各企業が人手を確保することによって、経済全般の上向きに寄与することが想定される。