
日本政策金融公庫(東京都千代田区町)で10月6日、「地方創生に向けて支援機関に求められる役割」をテーマにした講演会があり、全国で地域再生事業を展開する一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス(東京都品川区)の代表理事・木下斉さんが、国内外のまちづくりの成功例、失敗例を紹介した。木下さんは、地元の地権者らが中長期的な視点を持って自ら投資する「稼ぐまちづくり」の重要性を強調した。
「遠くをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」―。関東各地の農村を再生した江戸後期の農政家、二宮尊徳(1787~1856年)のこの言葉を冒頭挙げた木下さんは、現代の「近くをはかる者は貧す」の事例として、中長期的な視点(建設施設の維持費負担など)を欠いた補助金頼みの大型開発事業の数々の失敗例を説明。補助金には「何をしたら補助金をくれるのかという、補助金対象の事業しか発想できなくなる」弊害などを招く「補助金の悪循環」に陥る可能性があるとして、補助金頼みのまちづくりからの脱却を訴えた。
地元の地権者らの投資の必要性を強調する理由も説明。「まちづくりが成功した場合、地価が上昇するなど地権者の持つ不動産価値は上昇する。将来利益を得る者が投資をすれば、当然将来の利益を考えて中長期的な視点を持ってまちづくりを進め、投資に見合った回収を考えることになる。そこが自分の金でない補助金を使うまちづくりとの違いだ」と話した。
また、まちづくりは、コンサルタントなどの外部の会社にすべての業務を外注することなく「地元でできる業務は地元の自分たちでやることが大切だ。何でもすぐ外注するとまちづくりの業務の委細が見えなくなる」として、自分たちの組織内で業務を行う“内製化”の重要性も指摘した。
さらに成功したまちづくりでは現状を望む人々との間に摩擦が生じることが多く、中長期的な視点を持って従来と異なるまちづくりの中心で動く人は「地域の中では当初、マイノリティーになることがある」と述べ、同じ志を持った“仲間”を地域内外につくる大切さも話した。
まちづくりの投資原資となる融資への期待も述べ、地方銀行など地域金融機関が地元で果たすべき役割の重要性にも言及した。
講演会には田中一穂総裁以下役員と管理職が出席。加えて全国の自治体や金融機関関係者などオンラインも含め200人超が参加した。
