カルチャー

東京の真ん中で風になる ナイトレースで丸ノ内クリテリウム開催

東京駅前の行幸通りで行われた自転車ロードレーサーによるエキシビジョンレース「丸の内クリテリウム」
東京駅前の行幸通りで行われた自転車ロードレーサーによるエキシビジョンレース「丸の内クリテリウム」

 皇室行事と外国大使の信任状捧呈式の時だけ道路として使用される、JR東京駅中央口前から皇居に向かう行幸通り。東京のど真ん中にある長さ190メートル、幅73メートルのこの通りを閉鎖して2月18日の夜、プロの自転車ロードレーサーによるエキシビションレース「丸の内クリテリウム」が行われた。高層ビルが建ち並ぶ中、空が大きく広がった開放空間の下で、8チーム15人の選手が疾走した。シャーッと風を切る音、あっという間に加速する力強い踏み出し、高速でのコーナーワーク。数々の迫力あるシーンが眼前で展開され、詰めかけたファンは自転車レースの魅力を十二分に堪能した。

 スピードとテクニックに歓声

 このナイトレースは、新たな自転車文化の創造を図るイベント「GRAND CYCLE TOKYO 丸の内クリテリウム presented by フィナンシェ」のメインとして開催。今回の主催者で、自転車ロードレースのプロリーグを運営するジャパンサイクルリーグ(JCL)のテーマは「街がスタジアム」。日本のビジネスの中心地、丸の内でのナイトレース実施は、大きなインパクトとなった。

 初の試みを後押しするかのように、当日は快晴に恵まれ、夜に入っても無風で暖かな空気に包まれていた。鉄柵で仕切られているとはいえ、近い距離で大勢の観客が1周約400メートルの特設コースを取りまいた。普段なら見慣れないようなスピードで自転車が目の前を走っていく。車体には前照灯のほか、車輪のスポークに赤、青、緑、黄色のライトが組み込まれ、回転する光が高速で流れていく演出も施された。直線では50キロ以上のスピードが出ていると場内アナウンスされ、驚きの声が上がり、コーナーでは接触しそうな間隔ながら車列が生きもののように抜けていくテクニックに拍手が起きた。60周するレースは、あっという間に終了した感じだ。

優勝した小野寺玲選手のゴール
優勝した小野寺玲選手のゴール

 最後のスプリント勝負を制して優勝した小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)は「年末、2022 イエローチャンピオンウォッチの写真を撮った場所でレースなんて思いもしなかった。ライトアップされた中でのレースは、最初こそ戸惑ったが、すごく楽しかった」と話し、2位の沢田桂太郎(スパークル大分)も「観戦客がコースを取り巻き人垣が絶えず、その中を走るのは本当に楽しい」と笑顔だった。観戦客の息づかいが聞こえる中でのレースに、選手もより力を発揮できたのだろう。

 毎年開催を望むファン

 高校生の時からの自転車ファンという会社員の渡辺達也さん(45歳)は、「暗くて路面がはっきりせず選手は怖いはず。でも、生のレース観戦に勝るものはない。東京の真ん中で開催というのが何よりすごく、もっとスケールアップして毎年開催してほしい」と話してくれた。

JCLチェアマンの片山右京氏(左)とあいさつする橋本聖子参院議員
JCLチェアマンの片山右京氏(左)とあいさつする橋本聖子参院議員

 丸の内から自転車の魅力を発信する、その試みの第一歩は終了した。JCLの片山右京チェアマンも手応えを感じたようで、「日本の中心で自転車レースができた。新しい試みを今後もみんなで盛り上げていこう。全国で開催するJCLツアーのロードレースも応援してほしい」と表彰式で呼びかけた。