カルチャー

皇妃エリザベートの新たな“肖像画” 外見より人物像に焦点

 

『新しい肖像画』シシィ博物館 ©Vienna Tourist Board/Paul Bauer
『新しい肖像画』シシィ博物館 ©Vienna Tourist Board/Paul Bauer

 16歳で皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と結婚し、60歳で無政府主義者に暗殺されたエリザベート。19世紀末のハプスブルク帝政衰退期を生きたこの女性は、その美貌と悲劇的な人生で語られることが多い。この従来のエリザベート像に異議を唱える“新しい肖像画”が、ウィーン市内のシシィ博物館、ホテル・インペリアル、家具博物館の3カ所で公開された。国際女性デーを記念し、外見よりも「どのような人間だったか」を記憶してほしいという趣旨のもと、有名な肖像画を新しい“肖像画”で覆った作品だ。

『新しい肖像画』の詩 ©Vienna Tourist Board/Paul Bauer
『新しい肖像画』の詩 ©Vienna Tourist Board/Paul Bauer

 ウィーン市が公開したこのインスタレーションは、後世に作り上げられた表層的なイメージを打破し、エリザベートの真の人物像に光を当てるという趣旨のもと、デザイナー兼アートディレクターのビビアン・デーニングと協力して作成。美貌やドレス、うつ病、摂食障害、運動マニア、不倫、永遠の若さの追求といった定番キーワードの影に隠れがちな、「生身の女性」としてのエリザベート、皇妃であり、母であり、変革者である一人の女性に目を向けてもらうことを目的としている。

皇妃エリザベート肖像画(F・X・ヴィンターハルター作、1885年)シシィ博物館 ©Vienna Tourist Board/Paul Bauer
皇妃エリザベート肖像画(F・X・ヴィンターハルター作、1885年)シシィ博物館 ©Vienna Tourist Board/Paul Bauer

 ウィーン市観光局長のノルベルト・ケットナー氏は、「3月8日の国際女性デーと女性月間に際し、われわれは時代遅れで偏ったイメージを象徴的に修正することにしました。皇妃エリザベートは、その外見ゆえに人々の集合的記憶に長年とどまってきた多くの女性の一人にすぎません。“新しい肖像画”に書かれた詩は、ポップカルチャー的なイメージの陰に隠れがちな、先駆者としてのシシィ(エリザベート)の人物像に焦点を当てるものです」と話している。