
大切な物を手放すのではなく、直して長く使う心をもう一度現代に――。能登半島地震後の「思い出の品を直したい」という地元のニーズから、新サービスが生まれた。ふくべ鍛冶(石川県能登町)は、「世の中の道具の困ったを良かったに変える」をコンセプトにした修理プラットフォーム「DAIJINI(大事に)」を、この夏スタートした。
1908(明治41)年の創業以来、野鍛冶として農具や漁具の製作・修理や刃物の研磨・鍛造を生業とし、専門道具を扱う能登の一次産業を支えてきた同社。「モノを長く使う心を育む」を合言葉に、包丁研ぎ宅配サービス「ポチスパ」を開始し、日々全国の家庭から届く包丁を研磨・修理していた中、能登半島地震に遭った。先祖代々大事に受け継がれている輪島塗などを所有している家も多い能登。震災を機に、地震で欠けたり傷が付いたりした漆器をはじめとする道具を直してほしいという声が届くように。そこから、新サービス「DAIJINI」が誕生した。
「DAIJINI」の特徴は、美容ばさみや包丁、輪島塗などの修理したい道具を、注文後に届く専用の箱に入れて郵送するだけで、手軽に職人によるメンテナンスを受けることができること。幅広い年齢の人に利用してもらうため、手順は至ってシンプルにした。
修理できる道具と納期・価格は、「美容鋏メンテナンス」が約1週間・1本5000円から、「まな板削り」が約1週間・1枚6000円から、「輪島塗り修理・再生」が約3カ月・1個1万2000円から、「包丁研ぎ」が約1週間・1本3000円から。詳細は公式ウェブサイトに掲載している。
ふくべ鍛冶 代表取締役の干場健太朗さんは、「『直して使う』という文化は、かつて日本人の暮らしの根底にありました。しかし今、その価値観と共に、モノづくりを支えてきた職人技術までもが失われつつあります。DAIJINIは、こうした流れにあらがい、もう一度“モノを大切にする心”を現代に根付かせる挑戦です」としている。今後も全国の職人との連携を深め、対象分野の拡大や、地域に根ざした技術の承継、新たな雇用の創出を目指していくという。