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映画界の労働環境改善への活動で受賞 是枝裕和監督、「WORK DESIGN AWARD 2022」で

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 これからの「働き方」や「働きやすさ」について考えるきっかけづくりを目指す長期プロジェクト「働くの実験室(仮)」(SmartHR・東京)による「WORK DESIGN AWARD 2022」授賞式が、11月10日、東京都内で開催された。働き方や取り組みにより世の中に新たな気付きや前向きな影響を与えた人物を対象に今年新設された「パーソン部門賞」では、映画監督の是枝裕和さんが受賞。是枝さんは、フランスの映画制作などの公的支援機関である国立映画センター(CNC)をモデルにした組織の設立を目指し、日本映画界の労働環境改善を求める活動が評価された。是枝さんには、スペシャルプレゼンテーターのタレント・木梨憲武さんと俳優・伊藤淳史さんから表彰状が授与された。

 受賞について是枝さんは、「評価された取り組みは、まだスタート地点に立ったばかりで変革の実績はありません。受賞を励みにして活動につなげたいと思います」と述べた。さらに映画業界の労働環境の問題点について、「若い世代が少しでも良い環境で働けるように改革を進めなければ世界から取り残されてしまう。またハラスメントが起きた現場の告発についても、被害者を救済していくことが大切。連帯して内部から声を大きくして、先に進んでいこうと思っています」と述べた。

受賞の弁を述べる是枝裕和監督
受賞の弁を述べる是枝裕和監督

 取り組みを始めたきっかけについて是枝さんは、「僕がこの業界に入った頃は、ハラスメントなんて言葉もなく、怒鳴られたり、蹴られたりということが日常でした。そのことに対する違和感をずっと持っていたので、自分が上に立つようになったらハラスメントが無い現場を作っていこうと思っていました。また、良いものを作ろうとすると時間がかかり、若いスタッフに負荷をかけてしまいます。これを変えないと若い世代がこの仕事に就かなくなり、技術などが途絶えて継承されていかなくなるという危機感がきっかけです」などと語った。

 「WORK DESIGN AWARD」は、「働きやすさ」を前に進めることを目的に、働き方をアップデートした取り組みを社会に広く伝えていくためのアワードで、今年で2回目。グランプリには、学校法人の新渡戸文化学園の「ダイバーシティあふれる未来の学校づくり~二刀流教員×学外人材×旅する学校~」 が選ばれた。

審査員(上段)と受賞者6人(下段)の集合写真
審査員(上段)と受賞者6人(下段)の集合写真

「WORK DESIGN AWARD 2022」受賞作品

・グランプリ&キャリア部門賞 学校法人 新渡戸文化学園 「ダイバーシティあふれる未来の学校づくり~二刀流教員×学外人材×旅する学校~」

・ワークスタイル&プロセス部門賞 一般社団法人日本芸能従事者協会 「特別加入労災保険および相談窓口『芸能従事者こころの119』」

・ニューカルチャー部門賞 株式会社カミナシ 「全社員で同じ目標を持って働くために、SFプロトタイピング小説でイメージしやすいビジョンを策定」

・エンプロイーベネフィット部門賞 該当なし

・ダイバーシティ&インクルージョン部門賞 株式会社アクティベートラボ 「障害者のできる仕事エンジン『UnBi(アンバイ)仮』搭載 障害者雇用サービス」

・コンテンツ部門賞 うえはらけいた/マスナビ 「新人コピーライターの成長を描く漫画『ゾワワの神様』」

・パーソン部門賞 是枝裕和 「『日本版CNC設立を求める会』の設立を始めとした日本映画界の労働環境改善を求める活動 」