月刊誌『日経エンタテインメント!』(日経BP)で2013年から連載されている堂本光一のコラム「エンタテイナーの条件」の書籍版が、日経BPより2月22日に2巻同時刊行された。2016年にも1度書籍化されており、今回は2016年以降の約8年分のコラムの再編集。グラビアや舞台裏写真と共に、『エンタテイナーの条件2』『エンタテイナーの条件3』としてまとめている。
『エンタテイナーの条件2』は昨年25年間の歴史に幕を閉じた舞台「Endless SHOCK」の話題を中心に、“舞台制作”に関するコラム44本を収録。コロナ禍での試行錯誤や昨今のエンタメ界の課題“働き改革”についてなど、日本の演劇の象徴・帝国劇場のステージに立ってきた堂本光一だからこそ語れる秘話は、ファンのみならずエンタメ好きには興味深い内容ばかりだ。
また、2月15日に新メンバー5人を加え8人組として新たなスタートを切ったtimeleszの仲間探しオーディション、「timelesz project」=通称“タイプロ”で彼らに興味を持った人や、彼らが先輩たちから受け継ぐアイドル“イズム”に心動かされた人にも、ぜひとも手に取ってほしい1冊。
Netflixで配信中の「timelesz project -AUDITION-」エピソード14で堂本光一がオーディション現場を訪れた場面が話題になったが、そこで候補生たちに向けて優しいまなざしで語った金言「究極は“抜く”こと」「いっぱい失敗したほうがいい」という言葉の意味が、より立体感を持って感じられるはずだ。「Endless SHOCK」と光一がtimeleszの佐藤勝利にとってどれだけ大きな存在か、「Endless SHOCK」の重要な役を任されていた新メンバーの寺西拓人と原嘉孝がどれだけの実力者であるかは、昔からの彼らのファンには周知の事実。寺西は仲間や後輩が次々とグループを組む中、当時「~SHOCK」で共演中だった堂本光一からの「(1人で活動する)そういうやつがいてもいい」という言葉に背中を押され、演劇人の間では尊敬する先輩に作ってもらうことが慣例の“楽屋のれん”を自ら光一にお願いしたというエピソードもある。timeleszが、そしてジュニアも含めた彼らの先輩・後輩アイドルたちが、どんなマインドでステージに立っているかを知るにあたって、この「エンタテイナーの条件」は最適な入門書とも言えるだろう。
目次にサッと目を通すだけでも、「後輩に教えることで気づかされた僕の役割」(#15)、「自分の姿が重なった佐藤勝利の不器用さ」(#25)、「リスペクトとマナーは比例する」(#28)、「弱気な勝利がいなくなっていた2年目」(#29)など、“タイプロ”視聴層にも刺さりそうなワードがずらり。
「渡辺・森本の事態理由がもたらした宿題」(#31)というのはSnow Manの渡辺翔太とSixTONESの森本慎太郎が出演し、堂本光一が演出を務めた舞台「DREAM BOYS」にまつわる話。「DREAM BOYS」は菊池風磨も2021年、2022年に主演を務めた伝統作品だ。光一は近年、後輩の舞台の演出も多く手掛けていて、ジュニアとっては頼れる偉大な先輩の1人。堂本光一が語る、「ジュニアに今、僕が確かめたかったこと」(#34)、「『ベテラン光一、ジュニアに怒られる』の巻」(#35)といったコラムも、気になるところだ。
『エンタテイナーの条件3』のほうは、“音楽活動”と“エンタメと社会”をテーマとしたコラム46本を収録。こちらではKinKi Kidsについてを中心に、吉田拓郎、少年隊、長瀬智也といった“かけがえのない人物”に対する思いや、SNSにまつわる話なども。目次に並ぶ「“解散・引退”について思うこと」(#07)、「変わるからこそ伝統は受け継がれてゆく」(#18)、「アイドルのバカ力はどう養われている?」(#30)、「持ち歌をすべて覚えているとは限らない」(#43)といった見出しに、激しく興味をそそられる。
第3巻のあとがきで「その時その時で、自分なりに正直に答えてきたつもりですが、今の僕の考え方とは全然違う意見も含まれています。例えば、SNSに関して以前の僕は、『やりたくない』とか『舞台裏の姿を見せて何がオモロい?』と公言していましたが、今や…ファンの方々もご存じの通りです(笑)。」と本人が語っている通り、変化の激しいエンタメの世界で堂本光一という究極のエンタテイナーが、時代と真摯(しんし)に向き合い、大切なものは守り変えるべきものは柔軟に変化させながら歩んできた道のりが、この2巻に詰まっている。純粋な読み物としても、アイドルを読み解く資料としても必読。timeleszのメンバーも間違いなく読むであろう2冊。
『エンタテイナーの条件2』『エンタテイナーの条件3』は、各税込み3850円で発売中。