SDGs

緑を増やすポリエステルリサイクル 産学連携の「PLUS∞GREEN PROJECT」とは?

緑を増やすスタイレム(大阪市)の「PLUS∞GREEN PROJECT」
緑を増やすスタイレム(大阪市)の「PLUS∞GREEN PROJECT」

 環境への負荷が大きいファッション業界

 あなたは毎年、何着の新しい服を買っている?
 日本で販売されている衣類の大半は輸入品。つまり、店頭に並ぶ段階で、輸送時などに排出される温室効果ガスの総量は国産品と比較して増えるということになる。しかし環境に与える負荷は生産・販売時にとどまらず、残念ながら売れ残ったり、さらには店頭に並ぶ以前に廃棄されたりする衣類も少なくないのが現状。環境省によると、日本で年間に焼却・埋め立てられている衣類は約48万トン。なんと、大型トラック約130台分の衣類を毎日、捨てているという計算だ。

 環境のことを考えると、本当に必要な服だけを購入し、持っている衣類をできるだけ長く着続けることが望ましい。とはいえ、小さくなったりデザインが古くなったりして、不要になる服はあるだろう。そのような時、あなたはその服をどうやって手放す? 最近では衣類の回収を行う店も増えてきているが、それ以外の取り組みも出始めている。今回はその一つ、スタイレム瀧定大阪(大阪市、以下スタイレム)の「PLUS∞GREEN PROJECT」(プラスグリーンプロジェクト)を紹介する。

 産学連携のアップサイクルプロジェクト

 PLUS∞GREEN PROJECTは、文字通り“緑を増やす”プロジェクト。従来であれば廃棄されていた衣類などのポリエステル繊維をアップサイクルして、人々がサステナビリティにより親しみを感じることができるライフスタイルの実現を目指している。コア事業は、ポリエステル繊維などから作られる培養土の「TUTTI」(トゥッティ)。この土を使って花や緑を増やすことで、二酸化炭素やゴミの排出削減に貢献しようとしている。

ポリエステル繊維リサイクル培地の「TUTTI」
ポリエステル繊維リサイクル培地の「TUTTI」
TUTTIの説明
TUTTIの説明

 「え!?ポリエステルから本当に植物用の土を作ることができるの?」と思った人もいるだろう。確かにTUTTI=「ポリエステル繊維リサイクル培地」(培養土)の原料は石油由来だが、廃棄される衣類を少しでも減らそうと、徳島市の企業「アースコンシャス」と近畿大学が協働して研究・開発。栽培用の土としては10年以上の実績がある。

TUTTIのポップアップ展
TUTTIのポップアップ展

 では「TUTTIを使うメリットは?」というと、衣類をアップサイクルしてゴミを減らせる“環境に優しい土”ということだけではない。大きな特徴の一つが軽さで、運搬や栽培作業の負担を減らしてくれる。さらに、虫が発生しにくかったり、連作が可能だったりする利点がある。また、ポリエステル繊維に人工ゼオライトなどを混ぜているTUTTIは、保水性が高く肥料の調整が容易という特長もある。スタイレムでは、兵庫県・淡路島に「STYLEM AGRI LABO(スタイレムアグリラボ)」を設け、バジル、イタリアンパセリ、ローズゼラニウムなどを栽培している。現在、アグリラボで栽培したハーブを使用したエッセンシャルオイル作りなどを進めているという。

スタイレムのアグリラボ
スタイレムのアグリラボ

 ポリエステル繊維以外の使い道は?

 加工が簡単で安価なポリエステルはファストファッションを中心によく見かける素材だが、私たちが身に着けている衣類の繊維はほかにもいろいろとある。スタイレムでは日本コパック(東京)とコラボして、衣類ロスを減らす取り組み「Clothing Waste Recycling System」も始動。不要になった衣類から樹脂原料のペレットを作り、ハンガーやプランターなどへアップサイクルさせることを検討している。

衣類繊維でできたハンガー
衣類繊維でできたハンガー

 服→服や繊維→繊維へのリサイクルも大事だが、限りある資源を有効に活用するためにも、リサイクルの選択肢が広がっていくことを期待したい。