清々(すがすが)しく、世界一へ——。蒸留酒ジンで「ROKU(六)」や「翠(SUI)」のブランドを中心に、2023年の国内市場占有率約76%(小売価格ベース)を誇るサントリーが、30年を目標に国内市場を20年比で6倍以上、昨年比で2倍以上に拡大する野心的な新戦略を打ち出した。「翠(SUI)」は、昨年から展開するソーダ缶のパッケージをリニューアルして新たなファン獲得を目指し、「ROKU(六)」は高価格帯ジンの世界売り上げランキングで頂点を狙う。
「いと清々し。翠ジンソーダ」。サントリーは2月10日からテレビ、YouTubeで公開しているCMで、アーティストの平野紫耀さんを起用、爽やかさをアピールする。「翠(SUI)」は、「ジンはカクテルに使うお酒」「外国のお酒でなじみがない」といったイメージを打ち破り、ソーダで割って居酒屋や家庭での食事とともに楽しむスタイルを追求。今回のリニューアルでは、すっきりとした味わいの源となっている柚子(ゆず)、緑茶、生姜(しょうが)の配合を見直し「後口のキレ」を向上させたという。サントリーの塚原大輔執行役員は「新メッセージの『いと清々し』という古語は人々記憶に残りやすい。和素材を使っていることも強調できる」と説明した。
「ROKU(六)」は、「日本の四季が生んだ6種の和素材を使用したジャパニーズクラフトジン」というコンセプトの下、日本ならではの素材である桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒(さんしょう)、柚子を使用し17年に開発。世界60カ国以上で販売しており、22年は平均売価30ドル以上の高価格帯銘柄で世界3位となった。今後は日本で先行して限定販売される「ROKU(六)SAKURA BLOOM EDITION」を海外でも展開するなどして、「将来的には世界ナンバーワンを目指す」(塚原執行役員)という。
サントリーによると、ジンの市場規模は全世界ではウイスキーの16%であるのに対し、日本国内では4%にとどまっており、大きな潜在性を秘めている。今年は、「ROKU(六)」「翠(SUI)」「翠ジンソーダ缶」を合わせて、昨年比135%となる165億円の販売計画(出荷価格ベース)を掲げている。