ダスキン(大阪府吹田市)は9月16日の「敬老の日」を前に、60~80代の親世代1000人と、20~50代の子世代1000人を対象に、介護に関する実態調査を行った。その結果、親子で介護について話すことで介護へのイメージがポジティブになる傾向などが見られたが、実際に話し合っている割合は少なく、話し合うタイミングも遅い傾向が見られた。
■介護経験で介護へのイメージがポジティブに
調査対象は、親世代については自身の年齢が60~80代で別居の子どもがいる男女1000人(介護経験あり500人・なし500人)、子世代は自身の年齢が20~50代で60~80代の別居する親がいる男女1000人(介護経験あり500人・なし500人)。6月19日から6月21日にかけて、インターネットを通じて調査した。
まず、全体に介護のイメージ(複数回答)を聞くと、「精神的な負担が大きい」(69.5%)、「肉体的な負担が大きい」(63.5%)、「金銭的な負担が大きい」(48.8%)など、依然、ネガティブなイメージが高かった。一方で、介護のポジティブなイメージについて介護経験のあり・なしで比べると、介護経験がある親世代は「親孝行」(介護経験あり47.0%、介護経験なし24.6%)や、「恩返し」(介護経験あり29.8%、介護経験なし13.8%)など、ポジティブなイメージが高くなっていた。子世代も「親孝行」(介護経験あり30.4%、介護経験なし21.6%)、「恩返し」(介護経験あり24.4%、介護経験なし11.4%)と、介護経験がある人の方がポジティブなイメージを持っていた。
介護経験がある1000人に、介護経験の前後での介護に対する考え方の変化を聞いた。「介護のプロに頼ると安心」は、介護経験前の46.7%から経験後は64.5%へと17.8ポイント上昇。「外部の介護サービスを利用するべき」も経験前43.7%から経験後65.0%へと21.3ポイント上昇していた。「高齢者施設に入所させるのは抵抗がある」(25.0%→11.3%)、「家族の介護を他人に任せるのは罪悪感がある」(18.6%→6.2%)、「家族は自分の手で介護すべき」(14.7%→7.7%)の項目はポイントを下げていた。介護を経験することで、介護のプロのサービスなどを利用するメリットを実感する人が多いようだ。
■不安解消には家族の話し合いが必要だけれど・・・
介護経験者1000人に聞いた「介護に関する不安の解消につながること」(複数回答)は、「行政・自治
体の介護関連サービスについて情報を入手」(58.5%)、「介護サービスについての基礎知識を身につけておく」(57.6%)、「介護用の準備をしておく」(47.8%)、「介護の方針を決めておく」(47.3%)、「家族や兄弟・姉妹で話し合う」(46.2%)など、正しい情報収集や“家族での話し合い”が上位から連なった
親世代には自分自身について、子世代には親の介護について、親子で話し合った経験を聞いたところ、親世代は16.5%、子世代は25.2%。話し合ったきっかけを子世代に聞いたところ、約半数が親の病気や介護を機に必要に迫られてやっと話し合っていた。また、親世代の5割、子世代の7割が介護について家族で事前に話し合うことは「難しい」と感じていた。
■“手段”を話し合うのではなく人生の“ミッション”の共有を
「NPO法人となりのかいご」・代表理事の川内潤さんは、「介護について親子で話し合うべきことは、タラレバを前提にしたデイサービスや施設の使用有無などの“手段”ではなく、この先の人生をどう生きていきたいのかという“ミッション”を共有することです」と指摘。まずは子が、自身のことから話すことを勧めている。子どもがいる場合は、子(親から見ると孫)の進学や仕事の今後についての考えや思いなど、親に何度か相談するうちに、親がアドバイスをくれたり、親自身が今後どうしたいのかを語りやすくなったりする、とアドバイスする。「親子がミッションを共有し合えていれば、お互いを信頼し合う幸せな時間が送れるのではないでしょうか。心身に余裕のある早い段階から、身近な家族や友人に雑談程度に話をする練習をするなどし、お盆や年末年始など帰省したタイミングで、都度話し合える関係を早めに築いていけるとよいと思います」としている。
また、介護の極意として「Cool Heads but Warm Hearts」という言葉を引用し、「心は温かく共感性を持って、でも頭の中は常に冷静に。例えば地域の掲示板を見ると、自治体主催の介護予防に関する講座や体験会が開催されています。ちょっとだけ意識を外に向けてみると、頼れる情報がたくさんあります。一人で抱え込まずに“Cool Heads”に頼ってみましょう」とアドバイスしている。